研究課題/領域番号 |
19K07655
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
中村 康之 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (90569063)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / p53 / がん抑制遺伝子 / がんモデルマウス / Mieap |
研究実績の概要 |
本研究課題において、今年度はMieap欠損ApcMin/+マウスにおける小腸腫瘍組織内のがん特異的異常ミトコンドリアに関する機能的・形態学的解析を行った。ApcMin/+マウスにMieap-/-マウスを掛合わせ、生まれたApcMin/+Mieap+/-の遺伝子型をもつマウス同士を交配することでApcMin/+Mieap+/+、ApcMin/+Mieap+/-、ApcMin/+Mieap-/-マウスを得た。17週齢に達したこれらのマウスを解剖し、小腸及び大腸に形成された腫瘍(ポリープ)と正常腸管部位を採取した。これらのマウスの腸管腫瘍部位におけるミトコンドリア形態に関してはすでに、電子顕微鏡解析によりMieap欠損に従ってミトコンドリア内部のクリステの著しい欠失が見られること、さらには病理組織学的に腫瘍の悪性度がMieap欠損に従って増大することが明らかになっている。Mieap欠損によるミトコンドリア構造及び機能異常の原因に関わることが考えられる分子の探索を行うことにより、Mieap制御性ミトコンドリア品質管理機構の一端を担う分子の特定を目指ため、これらのマウスの小腸及び大腸に形成された腫瘍組織及び正常組織のトランスクリプトーム解析及びプロテオミクス解析を行っている。Mieap欠損によるミトコンドリア構造及び機能異常の原因分子を見出すことにより、Mieapによるミトコンドリア構造及び機能の維持を介したがん抑制機構の解明に取り組み、これらの成果は革新的ながん予防・診断・治療法開発に繋がると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ApcMin/+マウスが腸管ポリープからの出血による極度の貧血を起こすことから短命であり、加えて出産、育児の負担からApcMin/+メスマウスが使用できないことから、ApcMin/+マウスとMieapKOマウスとの交配によるApcMin/+Mieap+/+、ApcMin/+Mieap+/-、ApcMin/+Mieap-/-マウス作出は困難を極めた。しかしながら各遺伝子型のマウスが一定匹数得られたことから、おおむね順調に実験が推移しており、特定週齢に達したマウスから順次サンプルを採取して、トランスクリプトーム解析、プロテオミクス解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度から来年度にかけては、Mieap制御性ミトコンドリア品質管理機構の機能喪失により活性化するがん促進的分子・パスウエイの探索を行い、絞り込まれた候補に対して、腫瘍組織を用いた免疫組織学的解析による検証を行う。さらに腫瘍組織における異常ミトコンドリアの修復及び分解の状況を電子顕微鏡解析により明らかにする。以上の進捗状況を考慮しながら、Mieap欠損ApcMin/+マウスに引き続き、Mieap欠損Ganマウス(胃がんモデルマウス)、Mieap欠損LSL-KrasG12D/+/ Ptf1a-Creマウス(膵がんモデルマウス)の解析の順に進める予定である。しかしながら、3年間という比較的限られた期間であるため、胃がん及び膵がんモデルマウスを用いた研究については、先行研究で採取・保存されている腫瘍組織を用いた解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題に必要なApcMin/+MieapKOマウスの繁殖において、ApcMin/+マウスが腸管ポリープからの出血による極度の貧血を起こすことから短命であり、加えて出産、育児の負担からApcMin/+メスマウスが使用できないことから、ApcMin/+マウスとMieapKOマウスとの交配によるApcMin/+Mieap+/+、ApcMin/+Mieap+/-、ApcMin/+Mieap-/-マウス作出匹数が当初予定していたよりも少なく、これらのマウスの飼育中の負担を少なくし、さらには飼育中のマウスの状態を逐次把握するためケージ交換を業者に依頼しなかったため。
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