本研究課題において、p53誘導性蛋白質Mieapによる消化器がん抑制のメカニズムを解析するため、ApcMin/+(Mieap+/+)マウスからMieap遺伝子を片アレル及び両アレル欠損したApcMin/+Mieap+/-、ApcMin/+Mieap-/-マウスを作製した。17週齢に達したこれらのマウスを解剖し、小腸に形成された腫瘍(ポリープ)と正常部位を採取して比較を行った。電子顕微鏡を用いてミトコンドリア微細構造を比較したところ、ポリープ部位の細胞におけるミトコンドリア内部のクリステ構造が、Mieap遺伝子の欠損に従って著しく欠失していることを明らかにした。これらのポリープを病理組織学的に解析したところ、ポリープの悪性度がMieap遺伝子が欠損するに従って増悪化することを明らかにしている。 Mieap欠損によるミトコンドリアの構造及び機能異常の原因となる分子を探索することにより、Mieap制御性ミトコンドリア品質管理機構の一端を担う分子が特定できると考えられることから、これらのマウス小腸のポリープ組織及び正常組織のトランスクリプトーム解析及びプロテオミクス解析を行った。今回見出されたMieap欠損によるミトコンドリア構造及び機能異常の原因分子をより詳細に解析することにより、Mieapによるミトコンドリア構造及び機能の維持を介したがん抑制機構を解明することができれば、革新的ながん予防・診断・治療法開発に繋がると考えている。
|