研究課題/領域番号 |
19K07663
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
旦部 幸博 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (50283560)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レドックス制御 / 癌抑制遺伝子Drs / グルコース代謝 / ROS |
研究実績の概要 |
当該年度において申請者は、レドックスに関わる代謝経路とDrsの関係について検討を行った.Drsノックアウト胎児線維芽細胞(Drs KOMEF)と野生型(WT)MEFの細胞内における還元型/酸化型グルタチオンを定量したところ、Drs KOMEFにおいてはWTMEFに比べて酸化型の割合(GSSG/GSH)が増加する傾向が認められた。この傾向は培養後1日よりも3日で顕著であり、総グルタチオンの量には有意な違いは見られなかった。GSSG/GSHの増加は培地pHの低下と相関が見られ、低グルコース状態での培養ではKO, WT間の差が抑制されることから、Drsがグルタチオンに直接作用するよりも、グルコース代謝のシフトの結果として生じる酸化ストレスが関係している可能性が示唆された。また、Drs自身がペルオキシレドキシン様の挙動を示すかどうかについて、Drs遺伝子を導入した293T細胞をH2O2処理してウエスタンブロッティングを行い、二量体形成が増加することを確認した。ただし、二量体以上の分子種に相当するバンドも検出されたことから、別の実験系による検討が必要だと考えられた。また、これまで検討してきたLDHやPDK4以外の代謝関連酵素についても発現量の変化を検討し、脂肪酸合成初期遺伝子であるACC1や、Fasn(fatty acid synthase)、ACL (ATP citrate lyase)などの脂肪酸合成関連酵素にも変化が見られることを確認した。このことから、Drsがグルコース代謝以外にも総合的な代謝シフトの調節に関与する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度において研究室スタッフの定年退官で人員減になることが予め判明していたが、さらにコロナ流行に伴って講義のオンライン対応が生じたことと、准教授着任による大学運営業務の増加が重なった。このため研究に専念できる時間が、当初想定していたものよりもはるかに短くなった。また実験結果からDrsがグルタチオンを介するレドックス制御に関与する可能性が示唆されたが、予想していた結果とは若干異なりGSH+GSSG総量に対する影響があまり見られなかったことから、実験の進め方の見直しが必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
Drsが代謝シフトに与える影響について、グルコース代謝経路ならびにROSとの関連からPPP経路にも注目して、関連酵素の挙動について検討をつづける。また、グルタチオン合成との関連が深いアミノ酸代謝についても同様の検討を行う。またDrsが直接ペルオキシレドキシン様の作用を持つかどうかについて、生理的状態に近い条件での検討を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
非常勤職員の人件費について、2021年3月分を予め確保して年度末に予算調整を行っていたが、その後に勤務日数の変更が発生して別予算(校費)から充てる必要が生じた。本使用分については次年度の物品費の一部として使用予定である。
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