研究課題
SATB1はゲノムのオーガナイザーと呼ばれ、核内におけるDNAの構造変化に寄与する。この遺伝子は悪性化した乳がん細胞で顕著に発現し、がんの転移に関連する遺伝子の発現を促している事が報告されている。これらの遺伝子座の幾つかはスーパーエンハンサー(SE)と呼ばれる高密度エンハンサーの集合体を形成し、強力な遺伝子発現誘導が起こっている事が予想されるが、本来形成されない部位でのSE形成機構は明らかになっていない。本研究ではSATB1の発現と、異所的なSE形成によるがんの悪性化の解明を目的として研究を行う。これまでの実験で、良性の乳がん細胞であるMCF-7にSATB1を強制発現させる系では悪性化した表現系が一過的であり評価が困難であった。そこで上記した乳がん悪性化の系と併行して、上皮間葉転換(EMT)の安定した系を持つ肺がん細胞株であるA549を用いて、SATB1とSE形成変化の関連性について調べた。A549細胞はshRNAによるSATB1の発現抑制によって細胞の増殖能や遊走浸潤能が低下することが報告されている。まずA549細胞をTGFβ処理することでEMTを誘導する系を構築した。EMT誘導したA549細胞について、時系列に取得された外部RNA-seqデータを解析した結果、EMT誘導後12時間で転写因子の発現が一過的に上昇し、72時間後にEMTマーカーが発現上昇する動的な変動を示した。表現系の明確な変化に付随して遺伝子発現変動が見られたことから、EMTの過程ではゲノム上エンハンサーの再分配が生じている事が考えられる。そこでSEの構成要素であるBRD4のChIP-seqを、EMT誘導後0、12、96時間で行った。その結果EMTに伴うSEの再分配が生じていることが確認された。また12時間と96時間で、SEにエンリッチする転写因子のモチーフが異なることが示された。
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