研究課題/領域番号 |
19K07667
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平野 哲男 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 助教 (50228805)
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研究分担者 |
原田 浩徳 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10314775)
山崎 岳 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (30192397)
根平 達夫 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 准教授 (60321692)
石田 敦彦 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (90212886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子生物学 / 非コードRNA / 細胞分化 / 赤芽球分化 |
研究実績の概要 |
白血病細胞のがん化と関連している非コードRNAの一つであるCCDC26-RNAの作用機構を調べる目的のため、まず、CCDC26-RNAがタンパク質をコードしておらず、真性の非コードRNAであることを示す実験的証拠を得た。その後、CCDC26-RNAと相互作用する細胞内タンパク質の同定をすすめ、現在までにCCDC26-RNAと相互作用するタンパク質として細胞骨格タンパク質(ビメンチン)、細胞核タンパク質(ヒストンH2AX、クロマチン結合蛋白質CBX5)、RNAプロセッシング関連タンパク質(HNRNP)等、数種の結合タンパク質が同定された。これらの結果はCCDC26が細胞の異なる場所で機能する多能性の非コードRNAであるという我々の仮説と一致する。現在、さらに相互作用の特異性、認識ドメイン、RNAモチーフの解析をすすめている。以上の成果の一部は2021年12月の分子生物学会年会(横浜)で発表された。これらと並行して、CCDC26の生理機能として新しく発見した赤芽球細胞分化への関連に関して、特に優先して研究を進めた。その結果、CCDC26-RNAの発現抑制は発生初期の細胞以外では本来サイレントである胚型グロビンの発現を強く誘導し、さらにCCDC26の発現を回復することで胚型グロビンの発現は再び抑制されたことを観察した。これにより発生段階特異的なグロビン遺伝子スイッチング機構に関与していることが証明された。以上の成果は、2021年、Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Cell Research 1868: 118931に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの蔓延により、直接、大学に出向いての機器を使用した実験(通常実験室での生化学的実験やP1制限区域における遺伝子工学的実験など)、および大学備品である大型計算機によるデータ処理などの研究活動に大きな制限を受けたため。共同研究者らとの打ち合わせなどは直接対面ではなくオンラインが中心となり意思疎通のスピードは遅くなりがちであったため。また、対面授業の制限のため、毎週の担当授業をオンラインで行うための準備、オンデマンド教材の作成等に大きなエフォートを割かざるを得なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、CCDC26-RNAと相互作用するタンパク質の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染蔓延のため、計画に遅れが生じたが、研究計画にある「CCDC26-RNAと相互作用する細胞内タンパク質の同定」については予備的実験により数種類のタンパク質の同定が既に済んでいる。今後、タンパク質-RNA相互作用の特異性の程度、相互作用に直接関わるタンパク質モチーフや核酸配列の解析する実験をすすめてゆく予定である。これらは研究の信頼性、精密性を高めるために非常に重要であり、研究成果が大きなインパクトを持つために欠かせないものである。
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