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2021 年度 実施状況報告書

白血病に対する新規抗体医薬の開発とその薬理作用機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K07668
研究機関熊本大学

研究代表者

大里 元美  熊本大学, 国際先端医学研究機構, 客員教授 (90314286)

研究分担者 指田 吾郎  熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別招聘教授 (70349447)
岩崎 正幸  東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70790913)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード癌 / トランスレーショナルリサーチ
研究実績の概要

白血病の治療成績は化学療法および造血幹細胞移植により改善されたものの、まだ5年生存率は50%以下であり副作用も多く新規治療法の開発が必要である。本研究では、RUNX転写因子異常に起因する白血病(RUNX白血病)の分子機序の解明に基づき開発中の新規分子標的治療法の確立を目指した。特に下記2点を本研究の目的としており、助成期間の3年目に当たる令和3年度においては実施予定であった研究を新型コロナ肺炎による遅れは生じたものののおおむね計画通り行うことができた。1)に挙げていた薬効評価を簡便迅速に実施するため作製した白血病患者由来異種移植 patient derived xenograft (PDX) マウスモデルは昨年度より引き続き作製し個々のラインの遺伝子異常の検査などを行いその性質を詳しく検討した。これらのモデルを用い新規抗ITGA9抗体のin vivo 薬効評価をほぼ終了し現在論文発表を準備している。
1)新規分子標的インテグリンα9 (ITGA9)に対するブロッキング抗体の薬効評価:RUNX異常と協調して白血病を惹起するITGA9の過剰発現を、独自に見いだしたブロッキング抗体が阻害し細胞増殖を抑制することをマウス異種移植モデルを含む種々の方法で検証する。
2)ITGA9ブロッキング抗体による薬理作用機序の解明:ブロッキング抗体はITGA9と遊離リガンド間の結合を阻害することで薬理効果を示していると考えられるのでこれを検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究で目的としてあげた下記の2点について助成3年目(令和3年度)の進捗状況を次に記す。
1)新規分子標的インテグリンα9 (ITGA9)に対するブロッキング抗体の薬効評価:助成初年度に、a) ブロッキング抗体使用の対象となるITGA9過剰発現を示す白血病の頻度が急性骨髄性白血病症例において極めて高い(約80%)こと、b) ITGA9が白血病幹細胞マーカーであること、c) ブロッキング抗体の阻害効果が少なくともin vitro実験系においては極めて強力であること、を観察した。助成2年目(昨年度)には、ブロッキング抗体の阻害効果をin vivoで簡便かつ迅速に検証するシステムとなる3種類の異なるマウスモデルをそれぞれ完成・拡充させ、このうち一つのモデルについては新規マウスモデルとして論文発表した(Leukemia 2021)。助成3年目(本年度)にはPDXマウスモデルの遺伝子検査を行うことなどによってその拡充を図り、これらのモデルを用い新規抗ITGA9抗体のin vivo 薬効評価をほぼ終了し現在論文発表へ向けて準備を進めている。
2)ITGA9ブロッキング抗体による薬理作用機序の解明:ブロッキング抗体はITGA9と遊離リガンド間の結合を阻害することで薬理効果を示していると予備的実験結果より考えられていたのでこれを詳細に検討した。予想通り、ITGA9はオステオポンティン(OPN)やテナシンC(TN-C)などの可溶型(遊離型)リガンドと結合すること、そしてITGA9ブロッキング抗体はその結合を阻害すること、またその阻害によって下流のp38MAPKの活性化(リン酸化)が起こらず細胞増殖が抑制されること、などを助成2年度までに観察している。
このように実験はほぼ終了に近づいてはいるが新型コロナ肺炎による実験の遅延もあり論文発表に至っていない。この点がやや遅れているとした理由である。

今後の研究の推進方策

1)新規分子標的インテグリンα9 (ITGA9)に対するブロッキング抗体の薬効評価: 予定していたin vivo効果の評価法、a) RUNX1ETO遺伝子改変マウスモデル、b) t(8;21)をもつ白血病細胞株Kasumi-1の免疫不全NSGマウスへの皮下接種系、c) 白血病患者由来異種移植 (PDX) モデル、の全ての方法を用いた新規抗ITGA9抗体のin vivo 薬効評価をほぼ終了している。
2)ITGA9ブロッキング抗体による薬理作用機序の解明:ブロッキング抗体はITGA9と遊離リガンド間の結合を阻害することで薬理効果を持つと考えられ、その作業仮説がおおむね正しいことを昨年度まに確認できている。
本年度は成果を論文としてまとめ投稿し査読結果により要求される追加実験に備える予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ肺炎による研究遅延が生じたため
次年度には実験を終了し成果を論文としてまとめ投稿し査読結果により要求される追加実験に備える。また学会での発表もおこなう予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] National University of Singapore/Inst. Bioengineering Nanotechnology/Institute of Molecular and Cell Biology(シンガポール)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      National University of Singapore/Inst. Bioengineering Nanotechnology/Institute of Molecular and Cell Biology
  • [雑誌論文] The acidic domain of Hmga2 and the domain's linker region are critical for driving self-renewal of hematopoietic stem cell.2022

    • 著者名/発表者名
      Sun Y, Kubota S, Iimori M, Hamashima A, Murakami H, Bai J, Morii M, Yokomizo-Nakano T, Osato M, Araki K, Sashida G.
    • 雑誌名

      Int J Hematol.

      巻: 115 ページ: 553-562

    • DOI

      10.1007/s12185-021-03274-9

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] A Point Mutation R122C in RUNX3 Promotes the Expansion of Isthmus Stem Cells and Inhibits Their Differentiation in the Stomach2022

    • 著者名/発表者名
      Douchi D, Yamamura A, Matsuo J, Lee JW, Nuttonmanit N, Melissa Lim YH, Suda K, Shimura M, Chen S, Pang S, Kohu K, Kaneko M, Kiyonari H, Kaneda A, Yoshida H, Taniuchi I, Osato M, Yang H, Unno M, Bok-Yan So J, Yeoh KG, Huey Chuang LS, Bae SC, Ito Y.
    • 雑誌名

      Cell Mol Gastroenterol Hepatol

      巻: 13 ページ: 1317-1345

    • DOI

      10.1016/j.jcmgh.2022.01.010

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] RUNX1-ETO (RUNX1-RUNX1T1) induces myeloid leukemia in mice in an age-dependent manner.2021

    • 著者名/発表者名
      Abdallah MG, Niibori-Nambu A, Morii M, Yokomizo T, Yokomizo T, Ideue T, Kubota S, Teoh VSI, Mok MMH, Wang CQ, Omar AA, Tokunaga K, Iwanaga E, Matsuoka M, Asou N, Nakagata N, Araki K, AboElenin M, Madboly SH, Sashida G, Osato M.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 35 ページ: 2983-2988

    • DOI

      10.1038/s41375-021-01268-4

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Trib1 promotes the development of acute myeloid leukemia in a Ts1Cje mouse model of Down syndrome.2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshino S, Tanaka M, Sunami Y, Takahara T, Yamazaki Y, Homme M, Niibori-Nambu A, Osato M, Minami T, Ishihara K, Nakamura T.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: 36 ページ: 558-561

    • DOI

      10.1038/s41375-021-01384-1

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Tocilizumab Induces IL-10-Mediated Immune Tolerance in Invasive Candidiasis.2021

    • 著者名/発表者名
      Tan Z, Mok MMH, Mar Soe W, Thamboo TP, Goh JG, Sam QH, Osato M, Ravikumar S, Chai LYA.
    • 雑誌名

      J Fungi (Basel)

      巻: 7 ページ: 656

    • DOI

      10.3390/jof7080656

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Familial leukemia due to germline RUNX1 mutations: Lessons from two decades of research, and unsolved questions.2021

    • 著者名/発表者名
      Osato M
    • 学会等名
      Cancer Genomics Haematol Disord Conf, Newcastle Univ Med Malaysia
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] RUNX1-ETO induces myeloid leukemia in mice in an age-dependent manner.2021

    • 著者名/発表者名
      Osato M
    • 学会等名
      the 39th Sapporo International Cancer Symposium
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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