研究実績の概要 |
セパレースの早すぎる活性化は染色体不安定性の要因となるが、バイオセンサーを用いた解析によると多くのがん細胞株でセパレースが早期に活性化していた。本研究では、このがん細胞株でみられたセパレース活性制御異常の分子基盤を解明するために、セパレースの厳格な活性制御を保証する機構を解明し、その知見をがん細胞株における異常の理解へと展開する。3つの大枠を設けて研究を推進している。(1)セパレース活性化直前のサイクリンB1結合の活性制御機構における意義の解明。(2)がん細胞株におけるセパレース・サイクリンB1複合体の形成状況の解析。 (3)サイクリンB1結合の異常以外によってセパレース活性制御異常が生じている可能性の探求。当該年度は(1)を完了した。以下、今年度の実績の概要を記す。 多くのがん細胞株におけるセパレース活性制御異常は、分裂期中期の長さに影響を受けていることが明らかになった(Shindo et al., リバイス中)。さらに、セパレース変異体解析の過程で、セパレースの自己切断を阻害するとがん細胞株で見られたような時期尚早な活性化が生じることがわかった (論文執筆中)。そこでセパレースの自己切断ができない変異体を発現する細胞を用いて、セパレース活性化直前のセパレース・サイクリンB1複合体の形成状況を調べた。分裂期中期から後期にかけての細胞を同調する単極後期法(Shindo et al., Dev Cell, 2012)と免疫沈降法を組み合わせて、セパレース活性化直前のセパレースとサイクリンB1の結合を解析した。その結果、自己切断を阻害するとサイクリンB1の結合は減少しているという結果が得られた。
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