研究課題/領域番号 |
19K07680
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 光代 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80400448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BACH1 / Feroptosis / Pancreatic cancer |
研究実績の概要 |
膵癌細胞の90%以上はRAS変異を持つ。Ferroptosis誘導剤Erastinは、RAS変異癌のみで細胞死を引き起こす薬剤として見つかった。我々は今年度(2019年度)、マウス胎児線維芽細胞(MEF)においてBACH1がGclm, Gclc, Scl7a11といったFerroptosis抑制因子の転写を直接抑制することによって Ferroptosisを促進することを見出し報告した(J Biol Chem 2019 26:4814-4825)。一方、今年度、我々はBACH1が膵癌の予後悪性化因子の1つであることを報告した(Cancer Res 2020 80:1279-1292)。そこで、今年度私はBACH1が膵癌細胞においてもFerroptosis誘導促進を担えるか調べた。CRISPR/Cas9によるBACH1ノックアウト膵癌細胞(sgBACH1-AsPC1)およびsiRNAによるBACH1ノックダウン膵癌細胞(siBACH1-AsPC1)のRNA-seqの結果は、MEF同様に膵癌培養細胞株においてもBACH1がいくつかのFerroptosis関連遺伝子の発現を直接制御していることを示した。実際、コントロール細胞と比較して、siBACH1-とsgBACH1-AsPC1ではErastinのFerroptosis感受性が低下することが分かった。他方、ノックダウンおよびノックアウト処理細胞は未処理細胞に比べその感受性が40-50%程度低下することも示された。本理由については現在のところ不明である。また、BACH1高発現膵癌細胞(AsPC1)とBACH1低発現膵癌細胞(Panc-1)におけるErastinのFerroptosis感受性を調べたところ、高発現細胞の方が有意にFerroptosisを惹起しやすいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本研究の軸となると考えられる(1)BACH1がマウス細胞においてFerroptosisを促進すること、(2)およびBACH1がEMTを介して膵癌の悪性化に関わることを示す2本の論文を発表出来た。また、この時に得たデータを活用しながら、BACH1がヒト膵癌細胞においても、Ferroptosis関連遺伝子の発現を制御することで、ErastinのFerroptosis感受性を上昇させることができることを示す核となる結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、研究計画書に基づき、BACH1のTet-ONシステムを導入した膵癌細胞株を作製中である。今後、本細胞におけるErastinの効果を確かめると共に、マウスへの移植実験等によるin vivoにおける評価のための実験モデルの構築を検討する。また、BACH1によって直接制御されているものだけでなく、二次的な制御機構をも明らかにすべく研究を進めていく。
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