研究課題/領域番号 |
19K07680
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 光代 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80400448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BACH1 / Ferroptosis / Cancer |
研究実績の概要 |
本研究の目的はRAS変異がんにおけるBACH1のEMTによる悪性化促進機序とフェロトーシス制御機構を結び付け、新たながん治療戦略を創出したいというものである。鉄依存的な細胞死フェロトーシスはがん細胞の除去機構として働くことが分かっており、本機構は新規がん治療戦略の1つとして注目されている。昨年度、我々はBACH1がフェロトーシスの重要な制御因子の1つであることを報告しており、今年度(2020年度)は、フェロトーシスが脂質過酸化反応の伝播によって、容易に周囲の細胞に連鎖・拡散されること報告した(Cell Death Dis. 2021 12:332)。本結果はBACH1の制御によって、がん細胞のフェロトーシスをより効果的に拡散・誘導できる可能性を示唆した。さらに、今年度は、筋芽細胞の筋細胞への分化およびマウスのヘビ毒による筋損傷の回復時においてBACH1がSmad3やFoxO1等の抑制を介して、筋分化を促進できることを報告した(PLoS One. 2020 10:e0236781)。Smad3は筋分化を促進するMyoDやMyogeninの発現を抑制することが知られているが、一方で上皮間葉移行(EMT)に関与するSLUGやSNAILの転写を促進することが知られている。我々はBACH1が膵癌細胞において上皮系遺伝子の転写を広範に抑制するものの、間葉系遺伝子の発現にほとんど影響しないことを昨年報告した。しかしながら、その中でもSLUGの転写にはBACH1がバイバレントに作用することを見出しているが、その機序は分かっていない。現在まだ未確認であるもののこの作用にBACH1/Smad3の軸が関与している可能性が疑われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本研究の軸をサポートする(1)Ferroptosisが周辺細胞に伝播しながら広がって行くこと、(2)およびBACH1が筋損傷時にではあるが間葉系因子の転写を促すSmad3の発現を抑制することを明らかにし、これらに関する論文を2報発表できた。また、昨年度からの課題であるBACH1のtet-onシステムを安定導入した膵癌細胞発現株の作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、BACH1のtet-onシステムを安定導入した膵癌細胞発現株を用いて、フェロトーシス誘導剤の効果を確かめつつある。また、BACH1による細胞の運動能に関わる二次的制御機構の1つとして、Smad3の関与が疑われたので、本当に関与しているのか調査する。
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