研究課題/領域番号 |
19K07688
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今野 雅允 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (80618207)
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研究分担者 |
石井 秀始 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (10280736)
小関 準 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (20616669)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RNAメチル化 / シークエンス / 膵臓がん |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究でRNAのメチル化酵素の一つであるMETTL3の発現が;膵がんの悪性化に繋がることを明らかにしている。すなわち膵がんの自然発がんマウスにMETTL3を過剰発現すると、がんの増殖が非常に早く、さらに肝臓などへの遠隔転移も引き起こすことを明らかにした。ヒトの臨床検体を用いた解析においてもMETTL3が高発現の膵がん患者は予後が悪く、マウスのデータと一致していることを確認している。我々はさらにMETTL3の発現レべルが予後に影響を与えるがん種はそのほかに胃がん、肺がんであることを確認している。そこで本研究ではRNAのメチル化がこれらのがん種において悪性化を促すメカニズムの解明を目的とした。そのために、予後がMETTL3の発現と相関のあるがん種(胃がん、肺がん)の発がんモデルマウスにRNAメチル化酵素(METTL3)を過剰発現するMETTL3Tgマウスを掛け合わせたマウスの作成を行う。このマウスを用いてメチル化RNA免疫沈降シークエンス(MeRIP-Seq)やメチル化RNA認識タンパク質(YTHDFファミリータンパク質)の抗体を用いた免疫沈降シークエンス(PAR-CLIP-Seq)などを行い、データ解析を行うことでRNAメチル化ががんを悪性化するメカニズムの解明を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
METTL3がメチル化するRNAの網羅的な解析として、予後がMETTL3の発現と相関のあるがん種(胃がん、肺がん)の発がんモデルマウスに、METTL3Tgマウスを掛け合わせ、RNA高メチル化発がんモデルマウスの作成を行った。自然発がんマウスに比べてRNA高メチル化発がんモデルマウスでのがんの悪性化の変化を観察した。RNAメチル化レベルの変化が、がんの悪性化に変化を及ぼすメカニズムの解明のために自然発がんマウスとRNA高メチル化発がんモデルマウスの腫瘍からRNAを抽出し、HiSeq2500でシークエンスを行った。同時に、メチル化RNAに対する抗体を用いてRNA免疫沈降を行うことで、それぞれのマウスの腫瘍から抽出したRNAからメチル化RNAのみを抽出してシークエンスを行った。これらのシークエンス結果を解析することで、MeRIP-Seqデータからはがんの悪性化に寄与するRNAメチル化部位の候補が抽出され、RNA-Seqデータからはがんの悪性化に寄与するRNAの発現量変化を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
メチル化RNAはメチル化RNA認識タンパク質に認識されることで初めて機能を発揮することが知られている。平成31年度はMeRIP-Seqを行うことで、がんの悪性化に寄与するRNAメチル化部位の候補を抽出した。抽出したRNAメチル化部位の候補の中から、さらにがんの悪性化に寄与するRNAメチル化部位の絞り込みを行うために、RNAメチル化認識タンパク質に対する抗体を用いてRNA免疫沈降を行うことで、それぞれのマウスの腫瘍から抽出したRNAから、RNAメチル化認識タンパク質に認識されているメチル化RNAだけを抽出してシークエンスを行う。HITS-CLIP-Seqの結果を解析することで、がんの悪性化に寄与するRNAメチル化部位を決定し、がんの悪性化に寄与するメチル化RNAの同定を行う。2021年度はHITS-CLIP-Seqがんの悪性化に寄与するメチル化RNAの生物学的な検証を行う。RNA高メチル化発がんモデルマウスの腫瘍を用いて、メチル化RNAによる翻訳促進またはスプライシングの変化を、ウエスタンンブロッティング法などで検証する。RNA高メチル化発がんモデルマウスのメチル化RNAを阻害することでがんの悪性化を抑制できるか検討する。さらにこのRNAメチル化によるがんの悪性化がヒトでも共通の現象であることを示すためにヒトの臨床検体を用いた検証を行う。
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