研究課題
本研究課題の目的は、MIT/TFE ファミリー変異がん(胞巣状軟部肉腫(ASPS)、腎細胞がん(RCC)、悪性黒色腫)を対象疾患とし、 先進的エピゲノムランドスケープ解析を行うことにより、ファミリー分子の変異によって生じるエンハンサーリプログラミングと発がん機構を明らかにすることである。1. ASPSとRCCのChIP-seqとマイクロアレイ解析を行い、MIT/TFEファミリー分子の結合部位とその近傍のヒストン修飾、遺伝子発現を明らかにした。特に、ヒストンH3K27acシグナルを定量化して、腫瘍型特異的なスーパーエンハンサーを同定した。2 . ASPS細胞と原因遺伝子ASPL-TFE3 (AT3)発現消失細胞のクロマチンアクセシビリティの比較解析から、AT3の特異的エンハンサーと標的経路を抽出した。3 . ASPSの発症におけるAT3機能ドメインを同定した。
2: おおむね順調に進展している
1 . ASPS及びRCCのChIP-seq解析と遺伝子発現解析: ASPSの全ての症例と一部のRCC症例は、共通のMIT/TFE ファミリー型融合遺伝子ASPL-TFE3(AT3)を有している。我々が開発したASPSとRCCマウスモデルを用いて、ChIP-seq解析(Flag-AT3、ヒストンH3K27ac、H3K4me3、H3K27me3)とマイクロアレイ解析を行い、ASPSとRCCの共通性と特異性を調べた。2. CRISPRエピゲノム編集スクリーニングによるASPS発症責任分子及びエンハンサー領域の探索:ASPSの原因遺伝子であるASPL-TFE3(AT3)をASPL-MITF(AM)に置換すると造腫瘍能が失われることがこれまでの我々の実験で分かっているので、当初の研究計画では、ASPSの発生母地におけるAT3とAMの結合部位とエンハンサー活性を調べることになっていた。しかし、ASPS細胞でAT3の発現消失細胞が樹立できたことと、この細胞でも造腫瘍能が全く見られないことから、ASPS細胞とAT3発現消失細胞でエンハンサー/スパーエンハンサーを比較した。その結果、約500領域でエンハンサーに変化が生じていることがわかったので、ここを標的としてsgRNAライブラリーを設計し、dCas9-KRABを用いてin vivoでのエピゲノムスクリーニングを行った。3. AT3の特異的な機能ドメインとして、in vivo腫瘍形成実験から2箇所を絞り込んだ。4. 文部科学省科学研究費助成事業「新学術領域研究・先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム」と「新学術研究・先端モデル動物支援プラットフォーム・分子プロファイリング」の支援により、Hi-C解析と化合物ライブラリーの提供をうけた。
CRISPRスクリーニングによりAT3が制御する発がんに必須なエンハンサー及び責任分子を同定し、それらがASPSの発症や血管形成、転移においてどのような役割を担っているのかを解明する。また、腫瘍と間質の相互作用を解析する方法として、マイクロデバイスを駆使した3次元培養系を立ち上げたので、この方法を用いて血管形成の評価に応用する。本研究により、ASPSのみならず他のMIT/TFEファミリー関連腫瘍に対する新たな治療標的の同定と新たな治療薬の開発に繋げたい。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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