研究実績の概要 |
p53の標的分子であるMieapのがん抑制機機構として、Mieapが液胞様構造物の形成を誘導し、不良なミトコンドリアを液胞内へ丸ごと飲み込み分解し排除する(非古典的マイトファジー)という過去の報告に基づき、さらに液胞様構造物の存在下で鉄依存性の細胞死が観察されたため、Mieap発現時に形成される液胞様構造物の由来・鉄との関連について、オルガネラの膜融合に着目し、膜を前提とした輸送機構の検討から開始した。しかし、Mieapと鉄の輸送機構との関連を検討する過程で、Mieap発現時に形成される液胞様構造物が、膜を伴わない液滴であることを発見した。このことは、当初予期していないことであった。しかし、Mieapの液滴の解析を進めると、Mieapの両親媒性・C末端側のカルジオリピン親和性、N末端側のカルジオリピン代謝酵素群との親和性、といった分子特性が見いだされ、Mieapの過剰発現・生理的発現ともにミトコンドリアのカルジオリピンを維持・増加させ、ミトコンドリアの機能を維持させることが見いだされた。ただし、内在性蛋白の発現下に本液滴の形成が視認できていないのが今後の課題となった。また、Mieapの液滴により相分離される蛋白を探索する際に、リソソーム蛋白として知られるカテプシンDが、過剰発現・生理的発現下ともに、ミトコンドリアにも局在することを副次的に発見した。さらに、カテプシンDが、ERを介しリソソームに向かうための配列(ER signal peptide)に加え、ミトコンドリアに向かうための配列(mitochondrial targeting sequence, MTS)も有することを示し、論文報告した。
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