研究実績の概要 |
モノクローナル抗体は、がんを中心としたあらゆる病気の診断や治療に活用されている。がん細胞を狙う場合、どんなに抗体を改変しても、あるいは、どんなに強力な抗がん剤付加や免疫細胞誘導を行ったとしても、がん細胞に特異的な抗体でなければ、常に正常組織への毒性が懸念される。しかし、がん細胞のみに高発現している分子は限られており、理想的な標的分子は枯渇している。がん細胞に特異的な抗体を樹立しようとする場合には、一般的に、がん細胞と正常細胞から精製した各膜タンパク質の“違い”を発見し、その“違い”に対して抗体を作製する手法が取られるが、実際のところ、その“違い”はほとんど発見されていない。一方、我々が開発したがん特異的抗体作製法(CasMab法)では、がん特異的糖鎖が付加した糖タンパク質や細胞株を免疫することにより、がん特異的抗体を直接取得することができる。本研究課題では、がん細胞、正常細胞で共に発現しているタンパク質を標的とする。既に抗体医薬が開発されているが、より優れた抗体が求められるもの、及び抗体医薬が存在しない新規のものを標的分子とする。具体的には、3種類の標的タンパク質(E分子, H分子, C分子)に対して行う。1年目の令和元年度には、マウスに標的タンパク質発現細胞株あるいは分泌型の標的タンパク質を免疫することにより、3種類の標的分子に対する抗体のライブラリーを作製した。抗体のスクリーニングは、精製タンパク質や標的タンパク質発現細胞を用いて行った。細胞株を免疫する場合は、親株と発現株に対する反応性の違いを、フローサイトメトリー(研究室所有の96well全自動アナライザー)で検出した。2年目の令和2年度には、E分子, H分子, C分子に対して作製した各種クローンについて、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、免疫組織染色により活性評価を行なった。
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