研究課題
本研究では、膵癌などの胆膵腫瘍性病変を有する症例の血液、消化液等を対象としてNGSを用いた超高感度システムによる遺伝子解析から早期診断のバイオマーカーを探索し、内視鏡で採取可能な十二指腸液等の消化液を用いた早期診断法の開発を目的とする。令和1-2年度は、膵癌症例68例を対象として解析を行い、血液サンプルおよび手術検体10例、FNA検体19例、また一部の症例で十二指腸液を採取し解析を行った。NGS解析を用いる前段階としてKRAS遺伝子変異をデジタルPCRにより解析し、K-RAS変異は7例(10.3%)において検出された。血中K-RAS変異が陰性であった膵癌8症例(StageⅡ:4例、StageⅣ:4例)でcirculating tumor cells (CTC) の解析も行い、StageⅡで3例(75%)、StageⅣでは2例(50%)でCTCが検出され、膵癌の早期診断に血中CTCが有用な可能性が示唆された。十二指腸液の解析、遺伝子変異解析に可能なDNA量の回収が可能であることを確認できたが、口腔や食道由来の扁平上皮や消化管粘膜由来と想定される細胞も多く含まれ、NGS解析を施行したものの遺伝子異常の同定が難しかった。令和3年度はリキッドバイオプシーの観点から胆汁に着目し、胆膵癌パネル(遺伝子数60)を用いてNGS解析を行った。保存されていた34例の胆汁細胞診検体のゲノム解析では30例(91%)でOncogenic mutationが検出された。2018年4月~2021年3月にかけて採取した悪性胆道狭窄症例43例の胆汁の解析では20例(46.5%)でOncogenic mutationが検出され、胆汁遺伝子解析を用いた診断が有用な可能性が示唆された。これらの結果から、血液や胆汁などの液状検体を用いた遺伝子変異解析が、胆膵癌の早期診断に有用な可能性が示唆された。
すべて 2021
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Pancreatology
巻: - ページ: -
10.1016/j.pan.2021.04.001.
Journal of hepato-biliary-pancreatic sciences
巻: 28 ページ: 837-847
10.1002/jhbp.994