研究課題
前年度まで確立したLCM法による微小領域からのゲノムDNA回収法を改良し、FFPE検体から、より簡便かつ効率よくゲノムDNAを回収する方法の開発に成功した。この新手法を活用し、正所性子宮内膜の腺管を正確に切り出することで、次世代シークエンサーを用いて、信頼性が高く、効率的な正常子宮内膜におけるゲノム異常の検出することに成功した。しかしながら、FFPE検体に特有の偽陽性変異が問題点として浮上した。このような状況を打破すべく、我々は、FFPE検体において顕著に認められるシトシンの脱メチル化によって生じるC>U変異並びにゲノムDNA断片化・ミスアニーリングを効率的に検出し、除去する解析パイプラインの構築に成功した。上記の研究成果は、 Ikegami M(3名)Inoue S, (8名)Mano H. MicroSEC; Sequence error filtering pipeline for formalin-fixed and paraffin-embedded samples. Commun Biol 2021 4: 1396として、論文発表に至った。現在、これらのウェット・ドライの解析技術を活用することで、以下の研究テーマに取り組んでいる。一つ目は、着床障害(不妊症の一つ)の正所性子宮内膜のゲノム解析を行っている。予備実験の段階ではあるが、37症例に対する着床障害症例に対する正所性子宮内膜に対するゲノム解析を行ったところ、特徴的なゲノム異常が認められた。現在、病理解析結果との相関性を検証しており、実験結果が揃い次第、論文投稿を予定している。2つ目は子宮腺筋症の亜型である嚢胞性子宮腺筋症のゲノム解析である。16症例に対するゲノム解析を行ったところ、子宮腺筋症において好発していたKRAS変異(Inoue et al Nat Commun 2019)は認められず、両者は分子レベルでは異なる発症機序であることが示唆された。しかしながら、現段階では嚢胞性子宮腺筋症に特徴的なゲノム異常が検出されておらず、今後、さらなる検体を対象としたゲノム解析を検討している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Commun Biol
巻: 4 ページ: 1396
10.1038/s42003-021-02930-4