研究課題
MYC経路を抑制するmiRNAについて、MYC reporter assayを用いて、これまでの実験結果の裏付けをおこない、最もMYC活性を抑制するmiRNAとしてmiR-766-5pを同定した。前年までに行った発現アレイのデータおよびin silico target予測プログラムからmiR-766-5pの標的遺伝子としてMYCそのものではなく、BRD4及びCBPが絞り込まれ、ルシフェラーゼレポーターアッセイおよびウエスタンブロッティング法で確認した。また、miR-766-5pはFRAT2及びCBPの抑制を介してWNT/β-catenin活性を抑制した。H3K27アセチル化抗体を用いたクロマチン免疫沈降法によって、miR-766-5pはCBPを介してスーパーエンハンサー活性を抑制し、MYCを含む複数の癌遺伝子の発現を抑制することが明らかとなった。また、重要なことにBRD4及びCBPを介したスーパーエンハンサー活性を抑制することは癌細胞特異的にMYCを抑制し、非腫瘍細胞においてはMYCの発現を抑制しないことが確認できた。BRD4及びCBPによるスーパーエンハンサーの抑制は、WNT/β-catenin活性の抑制と協調的にMYCを抑制し、miR-766-5pのMYC抑制効果がこの両者による作用であることを示した。マウス皮下移植モデルを用いた治療実験ではmiR-766-5pはin vivoにおける腫瘍増殖を複数の細胞株で抑制した。腫瘍組織を用いた免疫染色によってBRD4、CBPおよびMYCの発現はmiR-766-5p投与群で抑制され、qRT-PCR法でmiR-766-5pの腫瘍組織内への導入を確認した。これらの結果からmiR-766-5pは核酸抗癌薬のシーズとして可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
計画していた実験はすべて完了し、これまでの研究成果をまとめ、論文投稿を行い、査読者の意見に対して追加実験を行っている状況。
今年度はこれまでの研究成果をとりまとめ、論文発表および学会発表を行う予定。現在、論文については投稿し、査読者の意見を参考に追加実験をおこなっている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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Mol Ther.
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