前年度までに同定した、MYC経路を抑制するmiR-766-5pのNUT正中線癌細胞に対する抗腫瘍効果について追完検討を行った。miR-766-5pはBRD4のcoding領域を直接の標的をすることからNUT正中線癌のドライバーであるBRD4-NUT融合遺伝子も標的にすることが予想され、BRD4-NUT融合遺伝子を発現するTy82細胞を用いて検討を行った。その結果、in vitroにおいて、miR-766-5pはBRD4-NUT融合遺伝子の発現を抑制し、またさらにCBPも同時に抑制することでNUT正中線癌細胞においてもMYCの発現を協調的に強く抑制し、強い抗腫瘍効果を発揮した。 マウス皮下腫瘍モデルを用いたNUT正中線癌に対するin vivoでの抗腫瘍効果があることを確認した。腫瘍組織を用いた免疫染色によって、BRD4-NUT、CBP、MYCの発現はmiR-766-5p投与群で抑制され、qRT-PCR法でmiR-766-5pの腫瘍組織内への導入を確認した。これらの結果からmiR-766-5pはBRD4-NUT融合遺伝子がドライバーとなるNUT正中線癌に対する核酸抗癌薬のシーズとして可能性が示された。 これらの実験結果について、論文としてまとめ、最終的に米国癌学会の機関誌であるCancer Research誌(Cancer Res. 2021 Oct 15;81(20):5190-5201.)に報告した。
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