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2019 年度 実施状況報告書

難治性神経芽腫治療に直結する代謝拮抗剤の利用法とその作用メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K07711
研究機関名古屋大学

研究代表者

清成 信一  名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (70570836)

研究分担者 西尾 信博  名古屋大学, 医学部附属病院, 特任講師 (00586430)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード代謝拮抗剤 / 神経芽腫 / MYCN
研究実績の概要

研究代表者は希少な小児がんである神経芽腫に対する新規治療法の研究開発に取り組んでいる。神経芽腫の中でも難治性で知られるMYCN遺伝子増幅型の神経芽腫細胞の増殖を特異的に抑制することのできる薬剤の発見を最終目標とする。独自の遺伝子ノックダウンスクリーニングの結果と既報の研究結果から、がん細胞のDNA複製に必要となるデオキシチミジン三リン酸(dTTP)の生合成経路に関与する遺伝子群が有望な治療標的分子となり得ることを見出した。
dTTP合成経路に関与する酵素のうちチミジル酸シンターゼ(TS)やジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)を標的とする代謝拮抗剤は各種のがんに対する治療薬として古くから使用されているものの、神経芽腫における有効性は十分に検証されていなかった。本研究により既存の代謝拮抗剤がMYCN遺伝子増幅型の神経芽腫細胞株に対して特異的に作用して細胞増殖を抑制することが明らかとなった。分子メカニズムに関しては、代謝拮抗剤の耐性化につながるとされる酵素(TS、DHFRなどの標的分子)や薬剤トランスポーターの発現量に有意な差は認められなかった。従って、代謝拮抗剤がMYCN遺伝子増幅型の神経芽腫細胞に作用するメカニズムは従来の薬剤耐性化メカニズムとは関係が無いことが明らかとなった。
また、患者由来腫瘍異種移植(PDX)モデルなどを用いたin vivo薬効評価実験を準備中であり、有効性が確認されれば既存の代謝拮抗剤の適応拡大につながる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度において10種類の神経芽腫細胞株(MYCN遺伝子増幅型6株、MYCN遺伝子正常型4株)に対する承認済みの代謝拮抗剤3種の細胞増殖抑制活性値(IC50)を算出した。その結果、仮説通りにMYCN遺伝子増幅型の細胞に対する特異的な細胞増殖抑制活性を確認できた。MYCN遺伝子増幅型の神経芽腫細胞の間でも感受性の違いが見られたため、分子機構の解明につながる知見が得られた。in vivo薬効評価系として患者由来腫瘍異種移植(PDX)モデルを研究分担者と共に取り組んでいる。現在までに2種類のモデルの樹立に成功した。

今後の研究の推進方策

まず、患者由来腫瘍異種移植(PDX)モデルの樹立数の増加を目指す。MYCN遺伝子増幅型と正常型のそれぞれについて複数のモデルが必要と考えられる。しかしながら神経芽腫は希少ながんであるのでモデル作成のための移植数は年間で10件以下であり、さらに腫瘍の定着率も低いため困難が予想される。
分子メカニズムの解明に関しても精力的に実験を進める。代謝拮抗剤の作用によって染色体DNAへのウラシル塩基の蓄積が亢進することを第一仮説としているが、MYCN遺伝子増幅型の細胞内で起こるDNA複製ストレスの上昇や過剰なDNA損傷応答の誘起などの観点からも検証を行うことを予定している。

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公開日: 2021-01-27  

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