研究課題/領域番号 |
19K07713
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
呉 しん 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (00764739)
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研究分担者 |
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Sdc4 / 癌幹細胞 / モノクロ―ナル抗体 |
研究実績の概要 |
癌組織は自己複製能や多分化能を有し、子孫の細胞を作り続ける少数の細胞集団(癌幹細胞)と最終的に腫瘍形成能を失う細胞集団(非癌幹細胞)の二群からなる。癌幹細胞は癌の再発や転移の芽と考えられている。私達はこれまでに膵臓癌細胞株を用いて、一個の細胞からマウスに癌組織を作る「スーパー癌幹細胞」を樹立し、そのドライバー遺伝子としてSdc4を見出した。Sdc4は細胞膜に発現するタンパクであるため、FACSによる癌幹細胞診断マーカーや、抗体治療の標的となる可能性も考えられる。本研究課題では①癌幹細胞に対してSdc4が作用するメカニズムの解明と対象疾患、 Sdc4を標的とした治療剤(抗体、核酸)を作製することを目的として診断・治療の両面から癌の根治を目指す。 初年度に大腸癌、食道癌、膵臓癌のパラフィンブロックから切片を切り出し、Sdc4の免疫染色用の抗体を複数検討し最適な抗体の選定を行った。② Sdc4を抑制するsiRNAを市販品の中で3種類、独自に7種類を設計し、Sdc4発現を効率よくノックダウンさせる配列No.7を見出した。③ 膵癌、大腸癌についての癌幹細胞モデル細胞をそれぞれ細胞株と臨床検体から樹立した。FACSにより膵管や皮膚由来の正常細胞ではSdc4の発現がみられず、癌幹細胞モデル細胞ではSdc4を高発現することが分かった。④ Sdc4 siRNAは正常細胞には影響を与えず、一方、2種の癌幹細胞モデル細胞の多くはSdc4 siRNAによって死滅した。令和2年度は、siRNAを用いた治療効果をみる実験を展開し、従来のNo.7配列に加え、No.6配列もそれ以上に効果があることが分かった。加えてモノクロ―ナル抗体の作製に着手し200種類作成し、その中で癌幹細胞モデルに反応する抗体を6種類同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
200種類のモノクロ―ナル抗体を作成し、これらの抗体は人工的に過剰発現させた正常のSdc4細胞外ドメインに反応することを確認した。この中で正常細胞には反応せず、癌幹細胞モデルに反応する抗体をFACSで繰り返し探索した。上清、精製抗体と順に検討し、最終的に6種類の抗体が得られた。癌幹細胞で過剰発現するSdc4が単に正常Sdc4の量的異常であれば200種の抗体は全て癌幹細胞モデルに反応するはずであるが、少数の抗体しか反応しない結果は、癌幹細胞に特異的なSdc4の構造的、機能的変化があることが示唆され、大きく進歩したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
得られたモノクロ―ナル抗体が細胞障害性を示すことができるか、正常細胞には作用しないことを確認し、これらをクリアすればキメラ化抗体を作成しヒト化抗体への準備としたい。また組織サンプルをモノクロ―ナルで染色すること、細胞障害性を評価して新規モノクロ―ナル抗体が適応できる対象疾患を決定してゆく。
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