研究課題
マウス担癌モデルにGd-EDTMPを投与し、中性子を照射することで腫瘍が縮小するかを検討した。BALB/cAJcl雌マウス(12週齢)を1週間馴化させた後、4T1マウス乳腺腫瘍細胞株を右脛骨に移植した。さらに1週間馴化させ、腫瘍形成を確認した後、マウスを以下の3群に分けた:(n=3または4)。Gd-EDTMP投与後中性子照射した群(Gd+/Nu+)、Gd-EDTMP投与後中性子照射しない群(Gd+/Nu-)、およびPBS投与後中性子照射する群(Gd-/Nu+)。Gd+/Nu+およびGd+/Nu-マウスに、20 mg-Gd/kg体重のGd-EDTMP/PBS溶液を単回腹腔内投与した(n=3)。Gd-/Nu+マウス(n=4)にはPBSのみを投与した。Gd-EDTMPまたはPBS投与24時間後に、Gd+/Nu+およびGd-/Nu+マウスの下肢に、京都大学原子炉実験所(KUR、5MW)で15分間熱中性子を照射した。照射後、14日間、マウスは餌と水に自由にアクセスできるようにし、全身状態を観察した。安楽死後、右大腿部および脛骨を採取し、腫瘍重量を測定した。川本法で5μmに薄切りし、157Gdの分布をLA-ICP-MSで画像化した。また、下肢のヘマトキシリン・エオジン(H.E.)染色切片の顕微鏡写真により、腫瘍の状態を評価した。腫瘍を含む右脚の重量を比較すると、Gd+/Nu+群(822±27mg)はGd+/Nu-群(1255±390mg)、Gd-/Nu+群(1147±173mg)より低い傾向にあった。このことは、Gd+/Nu+マウスの腫瘍増殖が抑制されていることを示唆していると思われる。Gd+/Nu+とGd+/Nu -の脚のLA-ICP-MS Gdイメージングでは、骨に極めて高いGdシグナルの強度が見られた。4T1腫瘍部では、Gd信号強度は周囲の筋肉組織よりも高かった。
2: おおむね順調に進展している
当初予定されていた、Gd-EDTMP投与後の中性子照射実験を完了した。予想された腫瘍増殖の抑制効果が十分に認められなかったため、より効果の高い中性子照射条件の検討が必要と考えられる。
予想された腫瘍増殖の抑制効果が十分に認められなかったため、より効果の高い中性子照射条件の検討が必要と考えられる。
新型コロナウィルス感染症の流行による移動制限のため、京都大学原子力複合科学研究所での中性子照射検討が十分行えなかった。次年度使用額により、追加実験を実施する。
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