転移性骨腫瘍は我が国では年間およそ20万人が発症しているといわれている。この10年間で骨修飾剤や内照射剤の実用により大きく進歩したものの、一般に原発巣の治療を行っている科で扱われることが多く、場合によっては治療が必要とされる骨転移への対応が遅れることがあるため、日常診療に際し簡便な診断および適切な治療の選択が必要である。 本研究の目的は、骨腫瘍治療のための新規ガドリニウム(Gd)中性子捕捉療法剤の腫瘍抑制効果が最も発揮される投与量および中性子照射線量をマウスを使って検証することである。新たな中性子捕捉療法製剤の候補物質であるGdのethylenediamine tetra(methylene phosphonic acid) キレート:Gd-EDTMPの骨腫瘍組織への集積を明らかにした。わずか20 mg/kgの腹腔内投与で24時間後に骨の造骨部に1000-2000ppmのGdが濃集することが確認できた。さらには、4T1乳腺腫瘍骨転移モデルマウスでは、有意ではないものの中性子照射による腫瘍収縮効果がはじめて確認され、今後の治療への応用が期待できることを明らかにした( 8th International symposium of Metallomics、Kanazawa、7/11-14、2022)。LA-ICP-MSによるイメージングの結果、おどろくべきことに骨のみならず4T1腫瘍細胞領域そのものにGdが分布した。今後、Gdの濃集メカニズムと、腫瘍収縮効果の関係を明らかにすることが必要であることを示唆した。
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