研究課題/領域番号 |
19K07718
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
若松 英 東京医科大学, 医学部, 講師 (40632617)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | LAG-3 / T細胞 / トロゴサイトーシス / MHC class II / 免疫チェックポイント分子 |
研究実績の概要 |
LAG3は抑制性補助刺激分子の一つで、疲弊化T細胞に高発現していることからPD-1やCTLA4に続く新たなチェックポイント分子阻害剤の標的として注目され、臨床試験が進んでいる。しかしながら、LAG3による免疫抑制作用の詳細なメカニズムは十分に理解されておらず、LAG3遮断による抗腫瘍免疫応答の増強メカニズムは不明である。本研究では、先端的分子イメージングと免疫学・生化学・生理学とを融合させた新たな見地からLAG3を解析することで、LAG3を介したT細胞活性化抑制機構の解明を試みている。これまでに、LAG3を介したT細胞抑制に細胞内領域非依存的な機序が存在することを見出している。また、分子イメージング解析から、LAG3によってTCRと結合していないMHCクラスII分子(MHC II)が免疫シナプスに集められることも見出している。免疫シナプスに集積したMHC IIはT細胞にエンドサイトーシス(トロゴサイトーシス)されることから、LAG3がより多くのMHC IIを抗原提示細胞(APC)から奪うことでCD4 T細胞の活性化が抑制される可能性が考えられる。2019年度はLAG3によってトロゴサイトーシスが促進されるかを解析した。イメージング解析、およびフローサイトメトリー解析によって、LAG3を発現したT細胞が非常に多くのMHC IIを取り込んでいることが明らかとなった。また、阻害剤、およびドミナントネガティブ変異体を用いた実験からLAG-3を介したトロゴサイトーシスがクラスリン依存的に起こっていることが示唆された。さらに、in vitroでの共培養の実験からLAG3発現T細胞が抗原提示細胞上のMHC II分子を減少させることが明らかとなった。これらの結果はLAG3によってトロゴサイトーシスが促進されることで抗原提示細胞からMHC IIを減少させることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究課題のキーとなるLAG3発現細胞がMHCクラスIIをトロゴサイトーシスするかについての検証を行った。その結果、LAG3によってMHCクラスIIがT細胞にトロゴサイトーシスされること、LAG3を介したトロゴサイトーシスがクラスリン依存的に起こること、LAG3発現細胞によって抗原提示細胞上のMHCクラスIIが減少することを明らかとした。マウスを用いた解析も予定していたが、LAG3を介したトロゴサイトーシスの現象だけでなく、トロゴサイトーシスの機構に焦点を絞り解析を行うことで、現象の確認だけでなく、機序、および抗原提示細胞への影響に関しても検証できており、計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はLAG3を介したトロゴサイトーシスの検証を進めてきた。それらの結果を踏まえて、次年度はLAG3を介したトロゴサイトーシスが抗原提示細胞上のMHCクラスIIの減少を介して、CD4 T細胞の活性化を間接的に抑制するかをin vitroのシステムを構築し、検証する。また、生体内において、LAG3発現細胞がMHCクラスIIをトロゴサイトーシスしているかについて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマウスを用いた生体内での解析を予定していたが、LAG3を介したトロゴサイトーシスの現象だけでなく、その機序を含めたin vitroでの解析に焦点を絞り研究を進めたために、研究費の使用額が予定よりも少なかった。 次年度はin vitroの解析に加えて、マウス個体内での解析を進める予定である。また、LAG3による間接的なT細胞抑制の機構を明らかにするために、RNAシークエンス解析も予定している。
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