研究実績の概要 |
自己免疫性筋炎である多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)は、約40%の患者が突発性間質性肺炎および悪性腫瘍を合併しやすい難治性膠原病である。従来の診断マーカー(CK, ALD, CRP, KL-6)、自己抗体価(抗Jo1抗体、抗ARS抗体、抗MDA5抗体)では、自己免疫性筋炎患者で間質性肺炎を発症した群を特定することはできなかった。そこで本研究では、治療抵抗性かつ悪性腫瘍を合併しやすい難治性膠原病(多発性筋炎・皮膚筋炎)の病態悪化および癌化を予測する新規バイオマーカー(可溶化蛋白質、自己抗体)の検出システムの探索、および実用化研究を実施する。具体的なバイオマーカーとしては、活性化免疫細胞・炎症性血管内皮・線維芽細胞および悪性腫瘍で高発現するCD146(MCAM), CD276(B7-H3), CD155(PVR),Galectin-3, 抗CD146自己抗体,抗Galectin-3自己抗体等を病態悪化バイオマーカー候補として、高感度検出系を樹立し病態悪化および合併症との相関を検討する。またこれまでの研究で確立済みの新規腫瘍バイオマーカー(EphA2, TROP2)も同時に測定し、これら候補バイオマーカーの産生機序および機能を解明し、難治性膠原病の新たな病態悪化マーカーの基盤研究を実施している。研究初年度(2019年度)の研究では、血管内皮細胞から遊離される可溶化CD146の値が自己免疫性筋炎患者(特にPM)で高値を示すこと、逆にCD146に対する自己抗体がDM患者で高値を示す事を、独自の測定系を樹立し示してきた。2020年度はさらに、CD146と反応性を示すGalectin-3が筋炎患者で有意に高いだけではなく、病態悪化(間質性肺炎)に伴い、さらに高値を示すことを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
間質性肺炎を併発する自己免疫性筋炎患者ではガレクチン3は高値を示したが、悪性腫瘍発症患者では有意に高値を示さなかった。そこで現在、がんの病態進行マーカーであるEphA2の独自の測定系を樹立したので、今後悪性腫瘍を併発した患者での新規バイオマーカー(EphA2, B7-H3, CD155等)について検討を行う予定である。 また多発性筋炎/PM・皮膚筋炎/DM患者の病態悪化を予測する診断支援用AIの開発も新たに計画している。AI(実際はML:機械学習)に特徴量として、従来の診断マーカー(CK, ALD, CRP, KL-6)を入力し、我々が独自に測定系を樹立した可溶化CD146, Galectin-3値および自己抗体価(抗CD146抗体、抗Galectin3抗体)を合わせて入力しMLに学習させる。さらに最近論文等で示されている各種サイトカイン(IL-6, TNF, IL-17,CXCL10等)および可溶性免疫チェックポイント分子(B7-H1, B7-H3, CD155)を測定しMLに学習させる。このようにAIで複数の検査結果を多角的に分析させて、極めて規則性の高いパターンを見つけることで病態悪化群を精度高く予測させる診断支援技術を開発する。
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