がん細胞は均一な集団ではなく、がんの多様性・不均一性(heterogeneity)が存在することが知られており、がん細胞の不均一性は、薬物療法への治療抵抗性の獲得や再発の原因となり、癌治療における解決すべき課題のひとつであると考えられる。肝細胞がんは、世界規模の全ゲノム解析プロジェクトの成果から、発がんに関わる様々な遺伝子異常が見出されたが、肺腺がんにおけるEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のように強力なドライバー遺伝子変異は少ないことが明らかになっている。本研究では、肝細胞がんにおける腫瘍内不均一性の生物学的特性を理解することにより、腫瘍内不均一性を有する腫瘍の薬物療法に対する治療抵抗性の克服へつなげるため、腫瘍内不均一性の定量評価を行い、臨床病理学的事象との関連を明らかにすることを目的とする。本年度は、近畿大学医学部及び関西医科大学の倫理委員会に承認された研究実施計画書に基づき収集した肝細胞がん検体の腫瘍内不均一性の定量評価結果を基に、腫瘍内不均一性の多寡を評価し、肝細胞がんの分子病態との関連を検討した。ゲノムワイドコピー数測定データを用いて、腫瘍内不均一性の指標となるClonal composition数を計測し、肝細胞癌の臨床病態との関連を解析した結果、コピー数変異に基づく不均一性の指標である高Clonal compositionを有する肝細胞がんは、細胞周期関連経路の遺伝子に富み、より活発な細胞増殖を示すことを明らかにした。
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