研究課題
申請者はこれまでに、EGFR変異導入細胞を用いた発現解析(リボソームプロファイリング)ならびにヒト肺がんデータベース解析により、EGFR変異陽性肺がんで特異的に発現上昇しているタンパク群を同定した。本研究では、申請者が発見した複数の候補タンパクに関して、診断マーカーとしての有用性や治療標的としての可能性について検討を進めた。複数のEGFR変異陽性、陰性細胞株の比較実験を行い、プロファイリングで得られた候補タンパク群がEGFR変異陽性細胞株で発現上昇していることを確認できた。また、これらのタンパクは分泌タンパクであり、細胞外小胞の表面に豊富に存在することが明らかになった。候補タンパクの1つは、siRNAによるノックダウン実験を行なったところ、EGFR変異陽性細胞で顕著な細胞増殖抑制効果が見られた。また、EGFR阻害薬耐性変異獲得細胞株を用いてCRISPRによるノックアウト細胞を構築したところ、親株に比べて増殖が抑制された。さらに、ブロッキング抗体による増殖阻害効果を検討したところ親株でみられた増殖阻害効果がノックアウト細胞では見られなくなった。以上の結果から、上記の候補タンパクはEGFR変異肺がんの検出に利用できる可能性を秘めているとともに、治療標的にもなる可能性が示唆された。上記の研究内容一部について、2019年度日本癌学会(京都)にて口頭発表(英語)した。また、本研究と関連し、EGFR変異導入細胞の治療薬感受性評価に関する論文がPLOS ONE誌に採択された。
2: おおむね順調に進展している
予定していた「候補タンパクの局在情報や生理機能」に関するデータが取得できた。また、EGFR変異陽性肺がん細胞株では候補タンパクの糖鎖修飾に違いが見られるなど、当初は予想していなかった新たな知見も得ることができた。こうしたバイオマーカーとしての基礎データに加え、治療標的になる可能性を期待させるデータも得ることができた。
今後は、岡山大学バイオバンクから血漿検体を取得し、候補タンパクの診断マーカーとしての有用性について評価を進める。また、候補タンパクの生理機能、分子機序についてより詳細なデータ取得を進める。
初年度の早い段階から候補タンパクの1つに解析を絞り込めたため、予定よりも解析が早く進み、その分、研究費を節約することができた。当初最終年度に予定していた臨床検体による検証を進めることにしたため、繰り越した費用は臨床検体(血漿検体)の解析に必要な試薬の購入費用に充てる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
PLoS One
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