研究課題
アジアでは、上皮成長因子受容体(EGFR)変異陽性の肺腺がんが特に多く発生しており、肺がん死亡の主な原因となっている。我々はこれまでに、EGFR変異導入細胞を用いた発現解析(リボソームプロファイリング)ならびにヒト肺がんデータベース解析により、EGFR変異陽性肺がんで特異的に発現上昇しているタンパク群を同定した。本研究では、申請者が発見した複数の候補タンパクに関して、診断マーカーとしての有用性や治療標的としての可能性について検討を進めた。複数のEGFR変異陽性、陰性細胞株の比較実験を行い、プロファイリングで得られた候補タンパク群がEGFR変異陽性細胞株で発現上昇していることを確認できた。また、これらのタンパクは分泌タンパクであり、細胞外小胞の表面に豊富に存在することやEGFR阻害薬処理した細胞では発現量の低下が見られたことから、EGFRを介したシグナル経路を介して発現が制御されていることが示唆された。さらに候補タンパクの1つをsiRNAによりノックダウンしたところ、EGFR変異陽性細胞で顕著な細胞増殖抑制効果が見られた。また、EGFR阻害薬耐性細胞株を用いてCRISPRによる候補タンパクのノックアウト細胞を構築したところ、親株に比べて増殖が抑制されることがわかった。さらに、候補タンパク特異的なブロッキング抗体で細胞を処理したところ、親株でみられた増殖阻害効果がノックアウト細胞では見られなくなった。以上の結果から、上記の候補タンパクはEGFR変異肺がんの検出に利用できる可能性を秘めているとともに、治療標的にもなる可能性が示唆された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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