研究課題
本研究課題では、臨床研究で得られた末梢血を用いて、がん抗原WT1特異的な細胞傷害性CD8+ T細胞(以下、WT1-CTL)の質的・機能的な評価を行い、がん免疫療法を発展させる知見を得ることが目標である。今期は、ゲムシタビン併用WT1ワクチン療法(GEM+WT1)またはGEM単独療法を施行された患者の末梢血に誘導されたWT1-CTLからhigh-avidity WT1特異的T細胞受容体(TCR)の単離を試みた。GEM+WT1によるWT1特異的免疫応答誘導にproof of conceptを与え、得られたhigh-avidity TCR(hTCR)のレパトワから、臨床効果予測に貢献する情報を探索した。結果、WT1ワクチンによってhTCRを持つWT1-CTLが誘導されることが初めて明らかとなった。次に、単離されたhTCRのレパトワを、昨年度確認したGEM+WT1で予後良好であった患者のWT1-CTLのレパトワと比較して解析した。興味深いことに、単離されたhTCRには、GEM+WT1によって予後良好であった患者のWT1-CTLに高頻度で認められたTRBV7-9遺伝子を持つTCRが、同一患者由来でないにも関わらず含まれていた。さらに、それらのTCRのCDR3には相同性が認められた。これらの知見は、患者間でWT1-CTLに共通するTCR usageが存在すること、また、それらはhTCRであることが強く示唆された。以上の結果は、本治療の臨床効果予測にWT1-CTLのTCRレパトワ解析が有用であること、更に同定されるTCRを人工的に遺伝子導入する強力な養子免疫療法への応用の可能性が示唆された。関連研究として、進行卵巣がんに対するWT1ワクチンの投与で誘導されるWT1-CTLと経時的に増加するWT1ペプチド特異的IgGがその予後と関連することを明らかにし、それに影響を与える因子を同定した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
J Immunother.
巻: 45 ページ: 55 - 66
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