研究課題
腹膜播種の克服は胃癌の生存率の向上に必須である。腹膜播種は、原発巣から遊離した癌細胞が、大網の乳斑と呼ばれるリンパ装置に特異的に着床して生じると考えられている。本研究では、腹腔内に磁性体粒子を投与し、磁性体粒子を選択的に乳斑に集約させた後に磁場印加することで粒子を加熱し、その温熱効果で、乳斑に着床している腹膜播種の原因となる胃癌細胞を根絶させる新規治療の開発を目標とした。2019年度は、in vitroで胃癌を含む各種の腫瘍細胞株を用いて、治療に最適な交流磁場発生装置の磁場の出力条件の検討や、治療に最適な磁性ナノ粒子の検討を行った。新規磁性ナノ粒子としては、イットリウム鉄ガーネットと、すでに臨床応用されているMRI造影剤であるフェルカルボトランと同組成だが粒子径の異なる各種のサイズの粒子を用いて検討を行った。その結果、通常よりややサイズの小さいフェルカルボトランが最適との結果を得た。新規磁性体粒子として使用の検討をしていたイットリウム鉄ガーネット粒子は分散性で問題があり、問題点の改善方法の模索を継続している。また、マウスにフェルカルボトランを腹腔内投与すると乳斑に集積することを組織学的に確認した。2020年度は、主に非担癌マウスにおいて、磁性ナノ粒子(フェルカルボトラン)を腹腔内投与して交流磁場を印加し、マウスに害を及ぼさない磁性ナノ粒子の投与量や磁場印加条件を生化学的、組織学的手法を用いて検討した。最終年度である2021年度は、マウスの腹膜播種モデルを使用し、磁性ナノ粒子の腹腔内投与後の交流磁場印加で腹膜播種形成の抑制が認められるかどうかを検討した。磁性ナノ粒子と交流磁場による磁気温熱療法を行った群では、未治療対照群に比較して有意に腹膜播種が抑制されていた。本研究により、磁気温熱療法は胃癌の腹膜播種に対する新しい治療法となる可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Cell Cycle
巻: 20(13) ページ: 1221-1230
10.1080/15384101.2021.1915604.
巻: 20(12) ページ: 1122-1133.
10.1080/15384101.2021.1919441.