研究課題/領域番号 |
19K07733
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
井上 博之 福岡大学, 医学部, 准教授 (80529967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ICD : 免疫原性細胞死 / DAMP / CRT |
研究実績の概要 |
現在、多くの複合癌免疫療法臨床試験が実施されており、進行非小細胞肺癌患者において一定の相乗的抗腫瘍効果が得られている。一部の化学療法が免疫原性細胞死(ICD)と呼ばれる癌細胞死を惹起することが要因のひとつとして注目されているが、どの薬剤がICDを最も効率的に誘導するかは不明である。本研究では、複数の培養肺癌細胞株に複数の化学療法及び分子標的薬で処理後、傷害を受けた癌細胞におけるICDの指標となる各種DAMPs分子を定量解析することでICD誘導能を比較解析し、最も強くICDを誘導する薬剤を同定することを目的とする。まず、各種化学療法(殺細胞性抗がん剤:シスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、ビノレルビン、ジェムシタビン)及び第三世代EGFR-TKIのオシメルチニブの各種ヒト肺癌細胞株における50%阻害濃度(IC50 (nM))をMTS(増殖・生存)アッセイにより決定した(0.026 uM~25.2 uM)。次に、上記実験で決定したIC50(nM)にて各肺癌細胞を処理し、72時間経過後、DAMPs 分子の蛋白質発現を比較定量した結果、6種類のEGFR野生型NSCLC細胞株において、代謝拮抗薬及び微小管阻害薬はプラチナ系抗癌剤より強くEcto-CRTおよびeIF2αのリン酸化を誘導した。また、様々な殺細胞性抗癌剤で治療したNSCLC細胞株においてEcto-CRT発現量とアポトーシス誘導能に強い正の相関を認めた。抗腫瘍薬で誘導されたEcto-CRT発現量は汎カスパーゼ阻害薬のZ-VAD-FMKとの共培養により減弱した。オシメルチニブも同様に、5種のEGFR遺伝子変異陽性NSCLC細胞株においてEcto-CRT発現量を増加させ、アポトーシス誘導能との相関を認めた。本研究結果より、代謝拮抗薬、微小管阻害薬及びオシメルチニブは、NSCLC細胞株におけるEcto-CRT発現を効果的に誘導し、これらの薬剤は複合免疫療法における抗腫瘍免疫効果の増強に寄与する可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の実施計画予定通りに各種実験(複数のヒト非小細胞肺癌株における各種殺細胞抗癌剤及び第3世代EGFR-TKIのEcto-CRT発現量及びeIF2αのリン酸化誘導能比較。Ecto-CRT発現量とアポトーシス誘導能(Annexin-V発現)の相関解析。Ecto-CRT誘導に対する汎カスパーゼ阻害薬(Z-VAD-FMK)の影響の検討)を遂行し、結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
実際に、各抗癌剤治療中の肺癌患者において、血清中DAMPs 分子が増加するか否か探索検討を行う。具体的には、今回同定されたペメトレキセド(PEM)もしくはドセタキセル(DTX)単剤で治療およびオシメルチニブ(EGFR-TKI)で治療した進行期肺癌患者において血中sCRT濃度の変化を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際に抗癌剤治療中の肺癌患者において、血清中DAMPs 分子が増加するか否か探索検討を行う。DAMPs 分子としてCRT及びHMGB1,Hsp70 など複数のタンパク質を経時的にELISA法を用いて測定する。
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