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2020 年度 実施状況報告書

TGF-βシグナルの調節機構に基づいた進行肝癌のオーダーメイド化学療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K07737
研究機関岩手医科大学

研究代表者

王 挺  岩手医科大学, 歯学部, 特任講師 (70416171)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード進行肝癌 / 分子標的薬 / TGF-β
研究実績の概要

今年度は、分子標的薬(Sorafenib とLenvatinib)によるHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)の増殖及び血管新生に対する抑制作用、または、TGF-β及びVEGFシグナルに対する影響を肝癌細胞(HepG2)及びHUVECにおいて検討し、比較した。結果:1. LenvatinibはHUVEC において10nMから細胞増殖抑制作用を示した。一方、Sorafenibは1μMまでは細胞増殖促進作用を示した。2. LenvatinibはTGF-βによるHUVECの血管新生の促進作用を著明に抑制したが、Sorafenibはさらに加乘効果を示した。3. TGF-βはHepG2においてVEGFシグナル因子 (p-VEGFR2, PLC)を誘導した。一方、VEGFは、HUVEC において、TGF-βシグナル因子 (p-TGFR1, p-SMAD2) を誘導しなかった。TGF-βはHepG2においてVEGFシグナルを活性化する可能性が示唆された。4. HepG2では、TGF-βによるMAPKの活性化の促進作用は、Lenvatinibによって抑制され、Sorafenibによってさらに加乘効果を示した。5. HUVECでは、VEGFによるMAPKの活性化の促進作用がLenvatinibおよびSorafenibに5nMの 低濃度で抑制された。LenvatinibおよびSorafenibの濃度が上昇した場合、逆に加乘効果を示した。一方、VEGFによるAktの活性化の促進作用が、Lenvatinibによって抑制され、Sorafenibによってさらに加乘効果を示した。
以上の結果から、血管内皮細胞の細胞増殖および血管新生に対してLenvatinibは著明な抑制作用を持つ、Sorafenibは促進作用を持つことが明らかになった。その理由は、VEGFシグナル因子であるAktの活性化の制御が関わっていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の研究では、分子標的薬による血管内皮細胞の増殖及び血管新生への影響及び分子メカニズムについて検討した。血管内皮細胞の細胞増殖および血管新生に対してLenvatinibは著明な抑制作用を持つこと、Sorafenibは促進作用を持つことを明らかにした。その理由は、VEGFシグナル因子であるAktの活性化の制御が関わっていることが示唆された。

今後の研究の推進方策

次年度は、研究費を以下の実験および論文発表に使用する。1. 基礎実験データを備える上に、臨床研究及び動物実験実施の要否を検討する。1) 臨床研究:(1) 分子標的薬治療を受けた進行性肝癌の患者に背景によって、HCV、HBV、NBNC群を分類し、各群において治療後の有効性について、腫瘍増殖、肺転移と腫瘍血管新生で評価し、群間の治療の有効性を比較する。(2)上述病例の血清を用いて、治療前後血中TGF-β濃度をELISAキットで測定し、治療効果との関連性を検討する。2) 動物実験: ヌードマウスにヒトの肝癌細胞を移植し、肝癌モデルを作成する。分子標的薬投与群の間で腫瘍増殖、肺転移と腫瘍血管新生を比較する。血中TGF-βレベルとの相関も分析する。肝臓組織において、TGF-βシグナル分子の発現を解析する。2. これまで得られたTGF-βをターゲットとした細胞増殖及び血管新生に対する分子標的薬剤の異なる作用およびその分子メカニズムに関する研究結果をまとめ、論文を作成、投稿する。

次年度使用額が生じた理由

研究費はほぼ予定通り使用した。残額は、次年度の試薬購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ALDH2 genotype modulates the association between alcohol consumption and AST/ALT ratio among middle-aged Japanese men: a genome-wide G×E interaction analysis.2020

    • 著者名/発表者名
      Sutoh Y, Hachiya T, Suzuki Y, Komaki S, Ohmomo H, Kakisaka K, Wang T, Takikawa Y, Shimizu A.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 10 ページ: 16227

    • DOI

      10.1038/s41598-020-73263-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 肝性脳症に対するBCAA とカルニチンの併用療法の合理性に関する基礎的検討2020

    • 著者名/発表者名
      王挺
    • 学会等名
      第43回日本肝臓学会東部会

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公開日: 2021-12-27  

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