研究実績の概要 |
今年度は、分子標的薬の細胞浸潤と血管新生に及ぼす影響とその作用の分子機構について検討を続け、以下の結果を得た。Sorafenibは、TGF-βと同様に、HepG2細胞の浸潤を促進することを示した。その作用は、MAPKの阻害剤であるU0126およびTGF-β受容体阻害剤であるLY2109761により抑制された。また、Sorafenibによる誘導されたMAPKの活性化は、U0126およびLY2109761により抑制された。Sorafenibは、TGF-βR2/MAPKを介してHepG2細胞の浸潤を促進することを示した。一方、Lenvatinib は、TGF-βによる細胞浸潤促進作用を抑制し、TGF-βによるTGF-βR2およびERK1/2の活性化促進作用も抑制することから、その細胞浸潤抑制作用には、TGF-βシグナルが関与することが示唆された。2. Sorafenibは、HUVECの細胞内TGF-βR2, VEGFR2, ERK1/2およびAktの活性化を促進し、TGF-βと同様にHUVECの血管新生を誘導した。LY2109761およびAktの阻害剤であるGSK690693はSorafenibの血管新生誘導作用およびAktの活性化促進作用を抑制した。Sorafenibの血管新生誘導作用には、TGF-βシグナルおよびVEGFシグナルが両方関与することを示した。一方、Lenvatinib は、TGF-βによる血管新生促進作用およびVEGFシグナル因子の活性化促進作用を抑制することから、Lenvatinibの血管新生抑制作用には、VEGFシグナルが関与することが示唆された。
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