研究課題
膀胱がんをより早期に検出でき、かつ簡易検査で使用可能なマーカーの獲得を目指し、膀胱がん患者尿中の自己抗体に着目した研究を行った。尿は直接腫瘍に晒されていることから膀胱がん特異的な抗体が多数存在すると考え、膀胱がん患者尿中に含まれる抗体をProtein Aカラムを用いて精製し回収した。個々の患者における抗体の存在量をSDS-PAGE法により確認した結果、個体差はあるものの、以降の実験に十分な量の抗体が回収できることを確認した。回収した尿中抗体を一次抗体として、膀胱がん細胞株のタンパク質を対象とした二次元免疫ブロット法を行った。その結果、膀胱がん患者の尿中抗体と反応した抗原タンパク質は28スポットであった。検出された抗原タンパク質スポットの中には膀胱がん患者の8割以上で反応性を示す抗原タンパク質も認められた。検出された抗原タンパク質スポットと一致する部分をCBB染色したゲルから切り出し、トリプシンを用いたゲル内消化を行った後、LC-MSを用いてタンパク質を同定した。まだ詳細な検討は行っていないのでタンパク質名は伏せるが、細胞骨格系や腫瘍発生、細胞膜上の受容体など、様々な機能に関わるタンパク質が含まれていた。これらは有望な膀胱がんの診断マーカーの候補となる可能性がある。今後はこれらの候補となるタンパク質を同定していくことに加え、同定されたこれらの自己抗体の特異性を健常者尿ならびに良性疾患患者尿を用いたELISA法を用いて確認する必要がある。
3: やや遅れている
膀胱がん患者の尿検体を用いて、膀胱がん細胞株のタンパク質を対象とした二次元免疫ブロット法により、膀胱癌患者尿中の抗体が認識する抗原タンパク質を検出した。これらのタンパク質の同定の際に、当研究室が保有する質量分析装置が不調となり、タンパク質の同定までに時間を要した。現在は同大学内の別の装置を用いてのタンパク質同定が可能となっている。
①膀胱がん患者尿中抗体を用いた抗原の同定(昨年度より実施中): 膀胱がん患者尿を一次抗体に用いた二次元免疫ブロット法により、膀胱がん細胞株由来のタンパク質に反応性を示す自己抗体が認識する抗原タンパク質を引き続き同定する。②同定された尿中自己抗体の診断マーカーとしての評価: ①で同定された抗原タンパク質のうち、多くの症例で共通していた抗原を中心にタンパク質合成を行う。膀胱がん患者尿、健常者尿及び非腫瘍性尿路系疾患患者尿(尿路結石や膀胱炎など)を用いたELISA法により反応特異性を評価することで、膀胱がんの診断マーカーとしての有用性を確認する。③同定された抗原タンパク質の膀胱がん組織での発現の確認: ②で有用性の確認が取れた自己抗体が認識する抗原タンパク質の局在が膀胱がん組織由来であるか否かを確認するため、膀胱がん組織を用いた免疫染色法にて検討する。
尿中抗体を用いた二次元免疫ブロット法で検出した抗原タンパク質の同定に少し時間を要したため、タンパク質合成やELISA法に関する費用の執行がなかった。これらについては次年度にタンパク質合成やELISA法の費用として使用する。
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