研究実績の概要 |
がん遺伝子BRAF V600E変異は、悪性黒色腫をはじめ、甲状腺がん、大腸がん、非小細胞肺がんなど、臓器横断的に報告されている代表的なドライバー変異であり、複数のBRAF阻害剤が開発され、臨床でも使用されている。しかし、臓器によるBRAF阻害剤に対する感受性の違いが存在していることから、臓器毎に発現プロファイルが異なることが知られているlncRNAなどが感受性に影響を与えている仮説を立て、本研究を行った。 BRAF V600Eを有する悪性黒色腫由来A375培養細胞にCRSPR-dCAS9活性化システムを利用して網羅的なスクリーニングを行い、発現レベルと薬剤耐性が正相関する複数の候補lncRNAを単離した。さらにBRAF V600Eを有する悪性黒色腫培養細胞株13種類の候補lncRNAの発現レベルとVemurafenibに対するIC50の相関についてTANRIC、DepMapデータベースを利用し、3つのlncRNA、SNHG16, NDUFV2-AS1, LINC01502を同定した。候補のlncRNAの中で、LINC01502はcompeting endogenous RNA(ceRNA)として複数のmiRNA(hsa-miR-18a-5p, has-let-7b-5p, has-miR-98-5p)の制御を介して、BRAF阻害剤耐性機序に関与しているMITFの発現レベルを制御することを明らかにし、TCGAコホートデータからBRAF阻害剤の新たなバイオマーカーとなる可能性が示唆された(2023年4月現在 投稿準備中)。 本研究結果は、lncRNAが分子標的薬剤の耐性メカニズムに関わっていることを明らかにすると同時に、今後の臓器横断的治療開発のバイオマーカーとなる可能性を秘めていることを明らかにした。
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