研究課題
免疫チェックポイント阻害薬はがんに対する免疫応答を誘導する一方、自己免疫性・炎症性の組織傷害 (免疫関連有害事象,irAE) をもたらす。そのため、免疫チェックポイント阻害薬によるirAEの発生機序の解明は喫緊の課題であるが解析は十分ではない。申請者らは昨年度までに、特定の環境で使用された担癌マウスに免疫チェックポイント阻害抗体を組み合わせ投与することで、肝傷害が誘発される可能性を見出した。さらに、その時にチェックポイント分子の発現パターンに差異が生じる可能性が示唆された。今年度はこれに加え、正常マウスと担癌マウスによる比較を行った。正常または担がんマウスに免疫チェックポイント阻害抗体を組み合わせ投与し、GOT値を指標に肝傷害の誘発について解析した。その結果、担がんマウスでGOT値の上昇が認められたが、正常マウスでは認められなかった。そのため、腫瘍形成が免疫チェックポイント阻害抗体の組み合わせ投与による肝傷害の誘発に必要であることが示唆された。一方で、著しい腫瘍体積の増大はGOT値に影響を与えることも示唆された。さらに、肝傷害誘発に腫瘍形成を必要とする背景を検討するため、肝臓内の細胞における免疫チェックポイント発現を解析したところ、PD-1はT細胞、NKT細胞、F4/80(+) Gr1(-) 細胞の一部に、4-1BBはNK細胞、樹状細胞、F4/80(+) Gr1(-) 細胞に、CTLA-4はF4/80(+) Gr1(-) 細胞の一部のみに発現していた。しかし、いずれも正常マウスと担がんマウスで免疫チェックポイント発現の著しい差はみられなかった。以上の結果から、免疫チェックポイント阻害抗体の組み合わせ投与による肝傷害の誘発には腫瘍形成が必要であり、免疫チェックポイント発現は腫瘍の有無で変化しない可能性が示唆された。
すべて 2021
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Oncotarget
巻: 12 ページ: 1256-1270
10.18632/oncotarget.27981