研究課題/領域番号 |
19K07746
|
研究機関 | 富山県産業技術研究開発センター |
研究代表者 |
大永 崇 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 副主幹研究員 (10416133)
|
研究分担者 |
藤井 努 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (60566967)
大塚 基之 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (90518945)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 血中循環腫瘍細胞 / 細胞回収 / シングルセル / 遺伝子解析 / マイクロ流体デバイス / ゲル |
研究実績の概要 |
癌のLiquid biopsyにおいて、CTC(血中循環腫瘍細胞)の単離・回収技術の開発が急がれている。本研究ではこのような技術をシンプルな方法で実現し、個々の患者さんにおいて癌の遺伝子解析を低侵襲に行えるよう、その基盤を提供することを目的として実施した。 癌細胞を選択的に捕捉するデバイスとして、既に私たちが開発した深さ100μmの流路に多数のマイクロポストを配置したマイクロ流体デバイスを使用した。本デバイスでは流路・ポスト表面に、癌細胞に特異的な表面抗原に結合する抗体を固定し、そこを流れる血液から選択的に癌細胞を捕捉する。本研究では本デバイスに捕捉した細胞を漏れなく回収する新たな技術の開発を行った。 はじめにデバイス上の全ての細胞を光重合により形成するゲルで包埋し、次にゲルを溶解して細胞回収する技術を検討した。ゲルを形成する高分子系を広く調査したところ、特定のポリマー系でゲル化およびその後の溶解が可能なことが分かった。そこで実際に細胞を捕捉したデバイスにこのゲル化溶液を流し込みその後紫外線照射したところ、十分な強度を有し細胞を包埋できるゲルが得られた。次にこのようなゲルから細胞回収を試みた。細胞周辺のゲルを特定の薬剤により架橋切断して流動させ、そこからマイクロピペットによりシングルセルの状態で回収するテストを行ったところ、問題なく細胞を回収できた。 次に上記のようにして回収した細胞について、遺伝子解析を実施してゲルに用いた化学物質等の影響を検討した。特定の肺がん細胞株を用い、既知のEGFR遺伝子変異の検出を試みたところ、複数回のテストで再現性良く変異が検出できた。このことから、ゲルに使用している化学物質は遺伝子解析に影響がないことが分かり、ここで確立した技術の有用性が確認された。
|