研究課題
本研究は、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSVtk)遺伝子とプロドラッグであるガンシクロビル(GCV) による悪性グリオーマに対する遺伝子細胞治療の確立を目的とし、HSVtk遺伝子をデリバリーする組織幹細胞の作製を課題とした。ヒト組織幹細胞をベースとして、HSVtk遺伝子とhTERT遺伝子とを同時に導入し、単クローン化後の抗腫瘍効果(バイスタンダー効果)を指標として治療細胞を選別した。製剤化への課題抽出の観点から、作製のベースとなる幹細胞の選別、および作製した細胞機能の持続性を評価対象とした。HSVtk遺伝子を保有する間葉系幹細胞を株化する基本工程はトランスポゾン法により確立した。その結果得られた細胞株はHSVtk遺伝子の発現量や細胞増殖期間が異なるため、クローン化および選別することの重要性が明確となった。一方で、ウイルスベクター法によるクローン化を要しない方法と比較すると培養期間の長期化により、HSVtk遺伝子の発現量の低下と、幹細胞の性質変化が生じた。計画当初から回避策としてTERT遺伝子の寿命延長効果を利用したが、効果が限定的であったことが原因であった。このため最終年度の2022年は、複数の細胞種においてTERT遺伝子の寿命延長効果を比較した。再生医療に期待される脂肪由来幹細胞、歯髄由来幹細胞においては寿命延長効果が低く、一方で線維芽細胞の中には寿命延長効果が高いものがあった。効果の違いを検討するため、線維芽細胞のTERT導入前後の遺伝子変動を比較した結果、多くの遺伝子発現に変動があり、寿命延長効果に関連する可能性がある。脂肪由来幹細胞、歯髄由来幹細胞におけるTERT遺伝子効果の向上を検討する同時に、新たな寿命延長方法を検討する必要がある。
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Cancer Gene Therapy
巻: 30 ページ: 85-95
10.1038/s41417-022-00527-5
Laboratory investigation
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