研究課題
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)にはBRCA1/BRCA2以外にも相同組換え修復(HR)関連遺伝子群が多数存在し、それらの遺伝子のバリアントは病的意義不明(VUS)であることが多く、HR関連遺伝子変異保持者に生じた腫瘍が、BRCA1/2変異保持者の腫瘍と類似の表現型を示す"BRCAness"、を呈するのかどうかは不明である。本研究の目的は、HR関連遺伝子にゲノムの異常を認める乳がんの『遺伝型』と、臨床像・ゲノム全体の変化などの乳がんの『表現型』の相関を検討し、HR関連遺伝子のVUSの病原性再評価と、乳がんのPARP阻害剤などの薬物療法の効果予測を行うことを目的としている。昨年度は、自施設の乳がん新鮮凍結検体175検体の全エクソーム解析によるゲノム情報と、病理・臨床情報を用いて、生殖細胞系列にBRCA1/2病的変異があり、かつ、腫瘍でBRCA1/2機能消失が認められた検体(陽性コントロール)と、HR関連遺伝子に異常がない乳がん検体(陰性コントロール)の『表現型』を利用して機械学習および遺伝統計を用いてBRCAness予測モデルを作成した。更にこの予測モデルをTCGAの乳がんのゲノム情報と病理・臨床情報を用いて精度検証を行い、モデルの汎用性を確認た。当該年度は、この構築したモデルを、自施設およびTCGA検体で認められたHR関連遺伝子の生殖細胞系列変異がVUSであった腫瘍に用いて、BRCAnessの程度により病原性の再評価を行った所、5検体でVUSの再分類が可能であった。ここまでの内容について、英語論文を作成し、査読性のある英文誌に掲載された。次年度では、学術集会での発表等成果報告を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
当該年度で、本研究の骨子は終了し、内容の一部は既に論文発表に至っている。
本研究内容について、国内・海外にて学術報告を行う予定である。更に、本研究の限界点を明らかにし、次の課題を構築する。
当該年度はCOVIDの影響が大きく、国際学会・国内学会共に参加および成果発表が困難であった。次年度は成果発表および研究内容の限界点の再調査を行う予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Science
巻: 112 ページ: 1310-1319
10.1111/cas.14803