研究実績の概要 |
腫瘍血管内皮細胞(EC)の抗原提示能を活かして、腫瘍の場所を特定するヘルパーT細胞(Th)と、腫瘍細胞を殺傷する細胞傷害性T細胞(CTL)を動員する次世代ペプチド免疫療法の論理基盤を確立した。また任意の抗原に対してHLA class II分子結合性ペプチドを自動予測するplatformをNECと共同で作製した。複数の腫瘍抗原、自己抗原についてペプチド予測能を検証したところ、世界で使われているnetMHCIIpanに比べて大幅に予想能が優れていた。 1)日本人に多く、自己免疫疾患に関連するHLA-DRB1*04:05, DRB1*08:03分子について、SK-SVMを基盤とする機械学習を用いたペプチド結合実験を行い、HLA class II結合性ペプチド予測platformを作製した。netMHCIIpanでは2,3割の的中率しかないが、我々は8割を超える的中率を達成した。特に前者では困難な結合値の順に並べる能力に優れていた(論文執筆中)。 2)作製したplatformを使って免疫チェックポイント阻害抗体で治療中のがん患者に多発するACTH分泌不全症について、HLA class I, II分子結合性ペプチドを同定した。東海大と共同で患者15症例のHLA class I, class II遺伝子の解析を行い、HLA-A*24:02 (13人/15人)およびHLA-DRB1*04:05, *08:03に高い関連を見つけた。これらHLA分子に提示されうるペプチドを同定し、患者T細胞の反応性を調べた(特許出願予定、論文作成中)。 3)HLA結合性ペプチドをミセル溶剤で樹状細胞に送達し、自己ペプチドに対しても高いT細胞誘導能を実現した。 4)HLA class I, II結合性ペプチドを含み、ECの抗原提示を高めるU2317を併用するペプチド免疫療法を開発し、高い腫瘍制御能を達成した。
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