研究課題/領域番号 |
19K07778
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
長尾 則男 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (40227989)
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研究分担者 |
片山 博志 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (90713975) [辞退]
笹井 香織 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50722162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HER2陽性癌 / コンパニオン診断 / 翻訳因子 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
代表者のグループは、これまでの研究から特にHER2陽性乳癌において翻訳因子eEF1A2の発現が有意に高いことを見出していた。本研究では、この知見をもとにeEF1A2をHER2分子標的薬治療の新たなコンパニオン診断薬として利用することを提唱し、その分子基盤の明確化と有効性を確立することを目的とした。 初年度では、①eEF1A2をHER2陽性乳癌のバイオマーカーとして確立すること、② HER2陽性乳癌における癌化メカニズムをeEF1A2に焦点を当てその反応経路を明らかにすることを目標とし、研究を行い、次の結果を得た。研究①において、HER2陽性乳癌30症例ではeEF1A2の発現が腫瘍ステージ進行とともに低下するが、HER2陰性乳癌28症例ではそのような傾向が認められないこと、HER2陽性乳癌ではeEF1A2が高発現ほど、無病生存期間が長い傾向を示すことが明らかになった。研究②において、樹立したeEF1A2を過剰発現するHER2陽性乳癌細胞株では、Bcl-2ファミリータンパク質のリン酸化レベルが低下し、cleavedカスパーゼ3の発現が増加することを見出した。この結果は、eEF1A2がHER2陽性乳癌細胞においてアポトーシス活性を高める役割を持つことを示唆した。 上記からeEF1A2はHER2の下流においてアポトーシスを促進作用をもち、その発現低下がHER2阻害剤の効果を抑制することにつながる可能性を示した。今後、より症例数を増やしHER2阻害剤のバイオマーカーとしてのeEF1A2発現解析の有効性を確立するとともに、アポトーシス経路への関与の詳細を調べることが求められる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画したHER2陽性乳癌の臨床的所見とeEF1A2発現量に相関があることと、それを説明しうる分子メカニズムの一端を明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
HER2陽性乳癌の予後とeEF1A2発現量に相関があることから、eEF1A2がコンパニオン診断薬として有効であることを示唆する結果を得たが、30症例と規模が小さいことやHER2阻害剤治療の効果とeEF1A2発現量との関係が不明であるため、症例数を増やし、より強固な結果を得る予定である。一方、eEF1A2が制御するシグナル経路として新たにアポトーシスシグナル経路のBcl-2ファミリータンパク質の関与を見出したが、eEF1A2がどのように働きかけているか不明であるため、この点をより詳細に調べる予定である。
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