研究実績の概要 |
小細胞肺がんは肺がんの中で最も進行が速く、多くの患者は再発し治療抵抗性を示す。5年生存率は7%以下と極めて予後不良にも関わらず、新規治療開発から長らく取り残されてきた。申請者らは疲弊した末梢血CTLをiPSC技術で若返らせることに成功後、もとのCTLより強い腫瘍縮小効果と生存期間延長をin vivoで証明した。本研究では小細胞肺がんの多くが細胞表面にGD2を発現することに着目し、先行技術の応用によりiPSCにGD2-CARを遺伝子導入後GD2-CARTを分化誘導し、小細胞肺がんに強力な治療となりうるか検証した。 はじめにGD2-CARを遺伝子導入するためのiPSCを健常人ドナーより樹立した。もとのレンチウイルスGD2-CARベクターを改変し、標識となるmcherryをCARと2A sequenceで繋げることによりベクター産生効率、遺伝子導入効率を容易に可視化できるようにした結果、GD2-CARベクターを効率よく産生することに成功し、iPSCにGD2-CARを遺伝子導入後、GD2-CAR-iPSCよりiPSC由来GD2-CARTを分化誘導した。また標的細胞として、患者ドナー胸水よりGD2陽性小細胞肺がん細胞を長期培養し、細胞株樹立に成功した。更にiPSC由来GD2-CART細胞と末梢血GD2-CART細胞の小細胞肺がんへの抗腫瘍効果を、GD2陽性小細胞肺がん細胞株3種類を用いてin vitro, in vivoで評価した。クロムアッセイ結果では末梢血GD2-CARTは小細胞肺がん細胞株には細胞傷害活性を10%程度しか示さなかったが、iPSC由来GD2-CARTは60-80%の細胞傷害活性を示した。マウスモデルでも、iPSC由来GD2-CARTの小細胞肺がんに対する、明らかな腫瘍増殖抑制効果と生存期間延長効果を証明することができた。
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