研究課題
本研究では、1,000例を超える大腸癌組織と「オキサリプラチンを用いた逐次療法と併用療法にBevacizumabを加え比較検討を行った無作為ランダム化第III相臨床試験(C-cubed study)」の参加者から得られた大腸癌組織を対象に、Genetic/Epigenetic変異、Tumor-infiltrating lymphocytes(TIL)/HLA class I発現の有無といった免疫疲弊(Immunological 変異)の解析を行い、大腸癌進展速度(進展緩徐か否か)の推定が可能となるMolecular subtypeの同定を試みる。我々が現在までに得た知見から、副作用の少ない化学療法から導入可能な(すなわち腫瘍進展速度が緩徐な)進行再発大腸癌症例のMolecular phenotypeとして、「MGMT(O6-methylguanine-DNA methyltransferase)不活性とフッ化ピリミジン系薬剤及びオキサリプラチン投与により誘導されるintermediate-hypermutant-phenotype大腸癌」を想定している。2019年度は、①RAS/BRAF/PIK3CA mutation ステイタス、②MSI/dMMRステイタス、③MGMT promoter メチル化ステイタス、④Wnt/RAS-RAF シグナルカスケードに関連するtumor suppressor genesのpromoterメチル化ステイタス、⑤TIL(CD3, CD8, FOXP3による免疫染色)評価、⑥HLA-LOH ステイタス、⑦MGMT promoterメチル化症例の化学量法施行前原発巣生検試料と化学療法施行後切除原発巣組織を用いた次世代シーケンサーによるTumor Mutation Burden(TMB)測定のうち、①、②、⑦につき鋭意研究を行い、良好な結果を得ている。特に⑦については、MGMTメチル化を認める症例の化学療法試行前の腫瘍組織、正常組織、化学療法施行後の腫瘍組織から得られたDNAを用い全ゲノム解析を行っており、Mutation signatureを現在解析しており、化学療法によるMGMT関連 G to A signatureがどうなるかを詳細に解明できるようにしている。
2: おおむね順調に進展している
予定研究7項目のうち、すでに3項目は終了している。今後の2年をかけて、残りの4項目を鋭意行う予定である。ただ、⑦MGMT promoterメチル化症例の化学量法施行前原発巣生検試料と化学療法施行後切除原発巣組織を用いた次世代シーケンサーによるTumor Mutation Burden(TMB)測定においては現在、1検体90GBのデータが得られており、ここからデータを整理することに時間を要する可能性があること、また、その結果が予想に反した場合については再検討を必要とする場合があるので注意深く検討する予定である。
2020年度は、⑦MGMT promoterメチル化症例の化学量法施行前原発巣生検試料と化学療法施行後切除原発巣組織を用いた次世代シーケンサーによるTumor Mutation Burden(TMB)測定、により得られたデータの解析③MGMT promoter メチル化ステイタス、④Wnt/RAS-RAF シグナルカスケードに関連するtumor suppressor genesのpromoterメチル化ステイタス、を全組織にて解析する予定である。③、④を行う際の検出技術はすでに確立しており、結果を得ることは容易である。⑤TIL(CD3, CD8, FOXP3による免疫染色)評価、⑥HLA-LOH ステイタスに関しては、現在、検出手法の最適化中であり、データを全収集できるのは2021と考えている。
2019年度に発注しているNGS解析が完納されていないためである。
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Oncology Letters
巻: 19(4) ページ: 2685-2694
10.3892/ol.2020.11365