研究実績の概要 |
腺様嚢胞癌(ACC)は稀な腫瘍であり、病状の進行は比較的緩やかであるが、術後に局所再発や遠隔転移が頻発することが知られ、長期予後は不良である。実臨床では有効な阻害剤が切望される一方、有効な阻害剤候補すらも、ほぼ示されてこなかった。その理由の1つに、最近まで腺様嚢胞癌の細胞株が存在しなかったことが挙げられる。申請者らはこれまでに、ほぼすべての症例において、MYBあるいはMYBL1が高発現する様になる染色体構造異常を相互排他的に有し、それらの転写産物は、融合型、切断型、全長型と多様性に富むことを明らかにしてきた。本研究では、最近まで世界に1つも存在しなかった腺様嚢胞癌の初代培養癌細胞株を、腺様嚢胞癌患者の手術検体より樹立し、治療標的分子の探索と治療法の発見を研究の目的とし研究を行い、以下の結果を得た。 1. 顎下腺由来の1例について樹立に成功し(ACC124)、耳下腺、硬口蓋由来の2例について現在樹立中である(ACC127, ACC128)。これらの症例の凍結保存検体について、PCR-basedの解析を行ったところ、いずれもMYBのmRNA高発現がみられ、転写産物はそれぞれ、ACC124, ACC127はMYB全長型、ACC128はMYB-NFIB融合型であった。また、全例において、FISHによりMYBの構造異常が確認された。 2. ACC124細胞株に対して、shRNAレンチウイルスベクターを導入し、MYBのノックダウンを行ったところ、MYBタンパク発現が顕著に減弱した。今後、腺様嚢胞癌の生存維持にMYBが不可欠であるかを検討するため、MYBノックダウン細胞を用いて、細胞の生存率が低下するかどうかを複数のshRNA発現ベクターを用いて検討する。 3. ACC124細胞株について、阻害剤ライブラリーを用いてスクリーニングを行い、ACC細胞株の増殖に影響を与える化合物を探索した。
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