研究実績の概要 |
がんの放射線治療は、放射線が癌細胞を殺傷してがん病巣を小さくする治療法である。近年の研究で、癌細胞の殺傷は放射線だけではなく、治療後に体内に引き起こる抗腫瘍免疫応答によっても起こり、病巣の縮小は放射線と免疫の働きで起きていることが明らかになっている。 本研究では、放射線治療後の免疫応答のひとつである液性免疫応答と従来の養子免疫療法(樹状細胞治療)着目し、血中に産生されるがん結合抗体利用した樹状細胞療法のモデルを作製できるかどうかの可能性を検討した。 これまでの研究で以下を示した。B16-OVA癌細胞株をC57BL/6マウスに移植した担癌マウスを用いて、(1) 放射線治療後、血中にがん結合抗体(Tumor antigen-binding antibodies, TAb)の増加を確認した。(2) このTAbは骨髄由来樹状細胞(BMDC)上に発現するFc受容体に結合し、TAb-BMDC複合体を形成した。(3) (2)の複合体を用いる樹状細胞療法(TAb-BMDC療法)は、X線療法と併用したとき、X線治療単独またはX線併用BMDC療法よりも高い治療効果を示した。(4) 腫瘍内とリンパ節内に誘導されるがん特異的CTL(CD8+OVA-Tetramer+細胞)の数を測定した結果、X線併用BMDC療法後に比べてX線併用TAb-BMDC療法後のほうがより多くがん特異的CTLが誘導されいた。 以上により、TAb-BMDC療法の効果は従来のBMDC療法のそれを上回り、それはがん特異的CTL数の上昇で説明できることがわかった。本治療モデルは放射線刺激による生物応答(免疫応答)を利用する新しいがん治療法モデルである。
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