脳が活動すると脳の活動部位の血流が一過性に増加する。このことは、脳の機能的充血として知られ、活性化した神経細胞より様々な血管作動物質が放出されることで、神経細胞と血管細胞が連関し活動部位に限局して生じる。これまで、機能的充血における脳血管の作用点は、活動領域に供給する脳実質内の穿通枝細動脈とその上流に位置する軟脈動脈である。近年、さらに下流の前毛細血管細動脈や毛細血管による血流調節機序が注目されている。そこで本研究では脳実質内の毛細血管を計測対象に脳活動時の血管反応について詳細に解析した。神経細胞の活動はカルシウムイオン感受性の蛍光タンパク質を大脳皮質神経細胞に遺伝子導入し、脳血管は蛍光造影剤により染色し、二光子顕微鏡を用いてマウス大脳皮質体性感覚野における神経細胞の機能活動と脳微小血管の構造変化を同時に撮像した。 認知機能の評価には、計測部位とは反対側の手指に冷感刺激を与えることで実験動物に条件付けを行った。これまでに学習の成立には周辺環境やマウスの体温が影響することが分かっており、現在体温変化に伴う脳の血行動態への影響について詳細に解析を進めている。また、条件付け時に負荷する給水制限が脳微小循環の血行動態に影響する可能性があることがわかった。そこで、給水制限によるヘマトクリットの増大と脳微小循環の血行動態との関係について、引き続き検討する。本研究では脳毛細血管内を流れる血行動態の評価法として、蛍光赤血球を用いて解析した。これまでに、3本の脳毛細血管が接続する合流部位ではより太い毛細血管に流れが合流することで主流の入口において血球の流れが加速し、一方分岐部においては、より血管抵抗が高い支流の入口において血球の流れが減速することがわかった。また、脳毛細血管の径の変化に対して、毛細血管の血球の流れは必ずしも相関しないことがわかっている。
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