研究実績の概要 |
前年度の実験で、一次運動野の上肢領域のうち、脳表面の領域(中心前回)に神経トレーサーを注入した場合には反対側の前頭葉皮質において比較的多くのニューロンが逆行性にラベルされたのに対し、注入が中心溝前壁内部に限局した場合には反対側のニューロンラベルがほとんど見られない傾向が見られた。これを確認するため、ニホンザル1頭を用い、一側の一次運動野の手(指および手首)領域、腕(肘および肩)領域それぞれの中心溝前壁、および中心前回部分に異なる神経トレーサー(それぞれfluoro ruby, colera toxin B, cascade blue dextran, fluoro emerald)を注入した。注入前には皮質内微小電気刺激によって一次運動野の各部位の身体部位再現を確認し、それに従って注入部位を決定した。脳の薄切切片を作成し、免疫染色法によってそれぞれのトレーサーでラベルされたニューロンを可視化した。 注入と同側および反対側の前頭葉を顕微鏡で観察した。一次運動野手領域の表面部分に注入したcolera toxin Bによるラベルは、圧倒的多数が同側の皮質にあり、中心溝前壁に注入したfluoro rubyのケースと比べ、特に反対側のラベルが多い傾向は見られなかった。腕領域に注入したcascade blue dextran, fluoro emeraldについても、比較を行ったが、顕著な違いは見られなかった。ただし、cascade blue dextranのケースについては、注入が一部中心前回まで広がっており、解釈には注意を要する。定量的な解析は、今後行う予定である。
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