研究課題/領域番号 |
19K07797
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
住吉 晃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所・分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員(任常) (80612530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 安静時機能MRI法 / コネクトーム / アレン脳科学研究所 / 血管造影法 / 神経回路モデル |
研究実績の概要 |
安静時機能MRI法では、安静時の脳機能画像を経時的に計測し、興味のある脳領域間の相関係数を算出する事で、脳領域間の結合性(コネクティビティ)を評価するが、しばしば問題となるのは、相関係数の値が神経科学的に何を意味するのか、という根本的な「問い」である。電気生理学的手法との同時計測例が報告されているが、電気生理信号と機能MRI信号との相関係数は低く(0.3以下)、神経科学的な裏付けが曖昧なまま使用されている。本研究では、安静時機能MRI法に代わる新たな計測手法として、高用量ガドリニウム造影剤を用いた高い空間解像度での血管造影法を提案する。本法では、造影剤投与前後の画像の強度比から、局所の脳血管体積を推定するため、歪みの大きい高速EPI撮像を必要とせず、形態画像レベルの高い空間解像度での画像取得が可能である。日・月・年のような比較的緩徐な時間軸で神経活動が賦活化すると、局所代謝要求の上昇に伴い、血管新生が亢進する事が知られている。実際に血管造影画像は、グルコース代謝(FDG-PET)マップに酷似しており、局所神経活動を間接的に観測する機能MRI画像であると解釈できる。更に100ミクロン以下の空間解像度でMRI撮像を行う事で、血管径の大きな動脈や静脈の信号を排除して、血管新生が活発な微小血管領域の血管造影法が可能となるはずである。本研究では、沖縄科学技術大学院大学に設置されている11.7-T高磁場マウス専用MRI装置を利用して、マウス生体における高い空間解像度での血管造影法の確立を目指した。投与プロトコル、撮像パラメータ、解析手順の確立を行い、最終的に50ミクロンという高い空間解像度で、マウス全脳の血管造影法を確立した。得られた研究成果は、MRIの国際学会にて報告し、現在論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有効性の高い市販ガドリニウム造影剤の選定、高用量造影剤の投与プロトコルの確立、感度上昇が期待できるクライオプローブの適用、繰り返し時間・エコー時間などのMRIパラメータの最適化、100ミクロン以下の空間解像度を実現する信号対雑音比の検討、血管密度分布に基づく画像のセグメンテーションの検討、マウスアトラスへの重ね合わせ方法の検討を行い、最終的に50ミクロンの高い空間解像度において、マウス全脳の血管密度造影マップの作製に成功した。更に血管密度マップにおける脳領域間の相関係数を算出する事で、脳領域間の結合性(コネクティビティ)を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ガドリニウム血管造影法に代わるMRI手法として、マルチエコー機能MRI、マンガン造影MRI、ガドリソーム造影MRI、酸化鉄造影MRI、スピンロックMRI、などを検討する。更にアレン脳科学研究所のホームページからダウンロードした組織データを基に、単シナプス結合に由来する全脳の構造相関マトリックスを作成し、各種MRI法から得た機能相関マトリックスと比較する。組織と相関が高い場合は、単シナプス結合由来の神経投射、低い場合は複数のシナプス結合由来の神経投射と解釈し、単シナプスデータと最も相関する機能MRI法の最適な計測パラメータを決定する。更にCre発現マウスデータの神経投射マップ(グルタミン酸作動性、モノアミン作動性など)を用いる事で、神経回路別の解析が可能になる。蓄積したマウスのMRIデータ及び関連する神経回路情報を計算理論モデルに組み込み、最終的には機能MRI信号のみから組織情報が推定可能な計算理論モデルを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験備品の購入を見送ったため残額が余ったが次年度で同じように実験備品費として使用する。
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