研究課題/領域番号 |
19K07798
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
海住 太郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (90826348)
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研究分担者 |
平田 雅之 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (30372626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 皮質脳波 / 体性感覚誘発電位 / ブレインマシンインターフェース |
研究実績の概要 |
皮質脳波(Electrocorticography; ECoG)はシート状電極を脳表に張り付けることで電位変化を計測する手法である。皮質脳波電極は刺入型電極に比して侵襲性が低いこと、長期安定性が期待できることから、特に臨床応用を見据えた次世代のブレインマシンインターフェース(BMI)の実現手法として期待を浴びている。本研究では、皮質コラムよりも小さなスケールで運動野の腕領域をくまなく計測し、皮質脳波電極による運動情報の解読性能や運動BMI制御成績を飛躍的に向上させることを目的とする。本年度は皮質脳波の超高密度多点計測システムの試作ならびに評価を行った。柔軟な生体適合性ポリマーであるパリレンを基材として、約1 cm×1.5 cmの計測領域に1152点の計測点を備えた皮質脳波電極アレイを作成した。併せて、市販の神経信号計測用集積回路を用いた信号増幅多重化基板も同時に設計開発を行った。試作した電極アレイと増幅多重化基板を組み合わせることにより、1152点の計測点からの信号を約100本の信号線で送出することが可能な計測システムを構築した。試作システムの評価のため、麻酔下の被検体1体に対して個々の指を刺激して体性感覚誘発電位(SEP)の計測を行った。この結果、高い時空間解像度でSEPを計測することができ、感覚皮質に形成されている五指の体性感覚地図を明瞭に描出することができた。以上より、急性計測においては1000点を超える高密度多点計測が実際に可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1000計測点を超える皮質脳波の計測はこれまでに例がなく、計測装置自体を新たに開発する必要がある点が本研究のキーポイントである。装置の開発については複数回の試作と評価のサイクルを繰り返す必要があるが、初回の試作と評価によって1152点の計測が可能であることが確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き複数の被検体に対して計測を行い、高密度多点アレイから得られる計測信号の特性を評価する。また、計測システムを慢性的に留置できるようにするための設計試作を引き続き継続する。運動野に電極を留置して評価を行うため、被検体に対して運動課題のトレーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計測システムの開発に関して、評価および試作を複数回繰り返す必要があると予期していたところ、初年度に期待する結果が初回の試作で得られた。これにより部材や加工費用が予定より抑えられたため。被検体数の増加や慢性留置に向けて引き続き製作と改良を行う予定であり、引き続き部材や加工費用としての使用を予定している。さらに、得られた大規模データの解析環境の整備にも使用する予定である。
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