研究実績の概要 |
GRP(gastrin releasing peptide)遺伝子の欠損マウスは、拘束ストレス下で恐怖学習を施すと過剰な情動表出を示す。また、その様な状況において、扁桃体外側核の内側に位置するAmygdalostriatal transition area(AST)が、GRP遺伝子依存的に活動することを我々は見出し、今年度に論文発表を行った(Goto et al., 2022)。本研究目的は、ASTの神経活動操作を通じてストレス下での情動調節機構を明らかにすることである。しかしASTは比較的小さい脳領域であり、従来の微小注入法で特異的に操作をすることは難しい。 扁桃体外側核特異的Cre発現マウス(GRP-Cre)、抑制性ニューロン特異的Cre発現マウス(Gad2-Cre)を交配したダブル遺伝子導入マウス(GRP-Cre/Gad2-Cre)では、AST領域に隣接するLAやCeA, mITCにおいてCre Recombinaseが発現することになるため、Cre依存的に遺伝子が消失するような遺伝子構築を施すことにより比較的AST特異性の高い操作が可能である。 2021年度は、前年度までに確立した条件で実験を進め、実際にDREADDの1種であるM4iを用いてASTの神経活動操作を行った。ASTに遺伝子を微小注入したところ、Cre発現のある近傍領域でM4i発現が抑制され、予定通りAST特異性の高い神経活動抑制が可能になった。またこの操作により、拘束ストレス後の恐怖学習による過度な情動表出(Freezing)を示すデータが得られている。今後、研究を継続し、揺るがないデータを得た後に研究発表を行う。また、神経の過剰興奮(M3q使用)による実験系も行い、ストレス応答におけるASTの機能を総合的に検証する。
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