研究の目的】妊娠期に飲料水や食物からフッ素を摂取することにより、小児の脳神経の発達に影響していることが考えられており、動物実験でも認知機能障害、学習障害および運動障害のようなASDに類似した報告がある。そのため、妊娠期のフッ素摂取による仔のASDの発病とそのメカニズムについて明らかにする必要がある。ただし、他の鉛や水銀などの有害金属との混合曝露が原因となっている可能性もあるため、フッ素のみに限らず混合曝露によるASD発病の可能性とそのメカニズムについても検討する必要がある。妊娠期フッ素摂取によって仔のASDを引き起こすか評価する。井戸水や土壌には鉛や水銀など他の有害金属が含まれており、フッ素との混合曝露から脳への影響も考えられるため、その評価も行う。【研究実施計画】開発途上国で小児の脳への影響が報告されているフッ素(NaF)濃度(2-25 ppm)を妊娠1日目からICR系マウスに自由摂取させる。出産した仔には、母と同様の濃度のフッ素を自由摂取させ8週齢を迎えた際、行動試験を行う。行動試験の結果と縫線核のセロトニン量、扁桃体の神経細胞数から仔マウスの「ASD」を引き起こすか検討する。初年度はICR系マウス雌雄に3週齢からフッ素入り飲料水を自由摂取させた。雌雄共に8週齢で交配させ仔への影響を検討した。フッ素濃度は当初の予定では2-25ppmであったが、5-30ppmに変更した。仔は生後21日目に離乳させ、雌雄分けて飼育を行った。仔が8-9週齢の間に、オープンフィールド試験(15分×1回)、高架式十字迷路(8分×1回)、Y迷路(8分×1回)、バーンズ迷路(1分×5回、5日間、6日目にプローブテスト)を行い現在解析中である。また、14週齢になった際、頸椎脱臼を行い脳を摘出し小脳、中脳、海馬のセロトニン量をELISAキットを用いて測定し現在解析中である。
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