研究課題/領域番号 |
19K07816
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑原 知樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任講師 (10533903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | LRRK2 / リソソーム / Rab / リン酸化 / パーキンソン病 / αシヌクレイン |
研究実績の概要 |
LRRK2はパーキンソン病(PD)の主要な病因因子であり、細胞内で一部のRab(Rab8, Rab10など)をリン酸化するキナーゼである。LRRK2のRabリン酸化活性はPDにおいて上昇していることが示唆されており、本研究ではその活性調節機構に着目して解析を進めてきた。本年度はLRRK2のRabリン酸化活性が細胞へのリソソームストレス負荷時に上昇すること、またその上昇はLRRK2の酵素としての活性上昇とは異なるとのデータを複数の実験系から確認し、論文として発表した。さらにRabリン酸化上昇に付随して生じるリソソーム内容物の細胞外放出現象について、より簡便・高感度かつ大規模に検出可能なアッセイ系を確立した。 また、LRRK2活性化因子として知られるRab29(別名Rab7L1)のリソソームストレス負荷時における役割について、特にリン酸化や相互作用因子に着目して解析し、責任キナーゼを同定するとともに、特定の相互作用因子がRab29のリソソーム局在化を制御することを明らかにした。 さらにLRRK2とαシヌクレインとの関係についても解析し、リソソームストレス負荷時においては両者が互いに作用しあうことでLRRK2のRabリン酸化活性と凝集αシヌクレインの分泌がともに亢進し、増悪サイクルが生じることを見出した。以上の結果からリソソームストレスがPDにおける病態形成の鍵になっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞へのリソソームストレス負荷がもたらす、LRRK2によるRabリン酸化亢進の分子機構を明らかにし、論文として発表した(Kuwahara et al, Neurobiol Dis 2020)。また、LRRK2によるRabリン酸化を介したリソソーム内容物の細胞外放出を評価する簡便かつ大規模なアッセイ系の構築が完了した。LRRK2活性化因子Rab29のリソソームストレス負荷時における局在変化とリン酸化の分子機構について詳細を明らかにした。さらにαシヌクレインとLRRK2の間の機能的連関の一端を明らかにした。以上より、研究はおおむね順調に進んでいるものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
リソソーム内容物放出の簡便・大規模アッセイ系が確立したことで、今後この系を用いてsiRNAによる遺伝子ノックダウンスクリーニングおよび阻害化合物のスクリーニングを進めていく。Rab29のリン酸化と局在変化の分子機構については、細かいデータを揃えたのち論文化を試みる。LRRK2とαシヌクレインの機能的連関については、今後初代培養ニューロンやミクログリアを用いた解析を追加するとともに、マウス個体を用いたin vivoでの効果の検証へと移る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はLRRK2, Rab29, αシヌクレインの機能的関連に関する培養細胞を用いた実験が主となり、スクリーニングの系が確立したところであるので、次年度にスクリーニング本格実施のための研究費を残すこととした。また、マウス個体での検証実験も主に次年度に行うこととした。さらにコロナ禍のため学会への出張費用がなくなり、その費用も次年度の学会参加費として繰り越すこととした。
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